「変化に強い骨太な会社を目指す」――。
ヤマハ発動機の設楽元文社長は、2025年2月、社長就任を目前に控えた中期経営計画の発表会でそう力強く宣言した。だがその直後、まさに会社を揺るがす「想定外の事態」に直面した。同年4月、アメリカのトランプ大統領が発動した相互関税、いわゆる「トランプ関税」だ。
これはヤマハ発動機にとって強烈な逆風となった。北米を主戦場とする船外機などの「マリン事業」は2輪事業と並ぶ同社の中核で、関税の影響をもろに受けたのだ。結果として、25年12月期の営業利益は前期比で約3割減少し、純利益は税務上の処理なども重なって半分以下にまで落ち込んだ。
しかし、下降線をたどっていた業績が足元で驚くべきV字回復を見せている。
26年12月期の通期業績予想は期初段階で回復を見込んでいたが、さらに8月になって大幅に上方修正したのだ。株式市場もこの復活劇にダイレクトに反応し、上方修正発表の翌日、株価は終値で前日比約20%も跳ね上がり、上場来高値を一気に更新した。環境激変のショックを乗り越え、宣言通り「骨太な会社」への道を歩み始めたヤマハ発動機。その原動力はいったい何なのか。
アジアで爆売れするバイクが救世主に
復活を強力に牽引しているのが、バイクやスクーターを展開する2輪事業だ。主戦場であるアジア各国で販売台数が大きく伸びており、特にインドでは第2四半期時点で出荷台数が前年同期比41%増と爆発的に伸びている。フィリピンやベトナムも好調だ。
「中東情勢による原材料高の影響はあったが、販売台数増と価格転嫁で増益となった」。ヤマハ発動機の橋本満企画・財務本部長はそう手応えを口にする。
2輪事業は売上全体の6割を占める大黒柱だ。それだけにこのセグメントでの好調は、会社全体に大きなプラス効果をもたらす。世界の2輪市場はアジアを中心に拡大が続いているが、中でもヤマハ発動機は高価格帯の車種を売り込む「プレミアム戦略」が軌道に乗っている。

26年12月期の業績見通しは、売上高に当たる売上収益が2兆9000億円(前期比14.4%増)、営業利益は2600億円(同105.7%増)まで引き上げ、ともに過去最高を狙う。設楽社長も「プレミアム系のモデルの売り上げ増がかなり数字として見えてきている。新車種投入もあり、その計画値もオン(上乗せ)した売り上げ増の計画だ」と自信をのぞかせる。



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