メルセデス・ベンツやBMWをスズキが抜き去る。日本の輸入車市場で、そんな番狂わせが起きている。
2025年度(25年4月〜26年3月)の輸入車登録台数でトップに立ったのは、万年首位の高級ドイツ車や、近年国内で勢いを増しているアメリカのテスラでもない。スズキが5万7360台と前年比5.25倍(425%増)に急伸し、初の1位となった(日本自動車輸入組合〈JAIA〉調べ)。

牽引役はインドで生産し日本市場へ輸出販売する、いわゆる「逆輸入車」だ。スズキは近年、SUV(スポーツ用多目的車)「フロンクス」(24年10月発売)や四輪駆動車「ジムニーノマド」(25年4月発売)などインド製の乗用車を日本市場に相次ぎ投入し、販売を伸ばしている。26年1月に発売したEV(電気自動車)「eビターラ」もこれに加わった。
「バレーノ」の雪辱を果たす
これまで新興国からの逆輸入車というと、品質や性能、先進国向けの法規対応、輸送コストなどの課題が大きく、台数を伸ばすのは容易ではなかった。
スズキにも苦い経験がある。16年にインドで生産する小型ハッチバック車「バレーノ」の輸入販売をしたが、ドアを開けたときに車からインド独特の臭いがする、電動格納式のドアミラーがないなどの理由で苦戦。販売を伸ばせないまま20年に生産を終了した。スズキの幹部は24年にフロンクスを投入する際、「バレーノの雪辱を果たしたい」と語っていた。
そうしたインド車への認識はすでに過去のものとなりつつあるようだ。「インド製? そんなの気にしたことないよ」。3月下旬に静岡県湖西市で開かれたジムニーのファンイベントに、納車されたばかりのジムニーノマドに乗ってきた30代夫婦は満足気にそう話す。
ジムニーノマドは25年4月の発売に先立つ同1月に受注を開始したが、販売計画(月間1200台)を大幅に上回る5万台の注文が殺到。わずか4日で受注を停止した。その後、インドでの生産計画を引き上げて、1年後の26年1月にようやく受注を再開、現在でも納車待ちが続く人気商品となっている。
フロンクスでは、日本専用仕様として四輪駆動モデルを開発。25年は1.9万台を販売し、コンパクトカー「スイフト」に次ぐブランドに育っている。スズキだけではない。24年3月にホンダがインドから初めて輸入販売を開始したSUV「WR-V」も同2.7万台と高水準の販売が続いている。両社の販売実績を見ると、日本市場ではすでにインド生産車への抵抗はなくなっていることがわかる。
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【インド生産になお残る課題とは?】
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