これに対して、人工的に作った乳酸を直接添加する手法が「速醸」だ。現在、9割以上の酒が速醸で造られている。
酒蔵に棲みついた乳酸菌が生み出す生酛造りの酒には、複雑な旨さがある。その反面、速醸に比べて大変な労力と時間がかかり、安定性に乏しく、量産はできない。
だが、手間と技術を要する造り方であるからこそ、挑戦する価値がある。
5代目が売るために試した手法に、6代目は別の可能性を見た。この造り方なら、蔵の個性、地域の独自性が出せる。義大さんは初めて旨いと思った生酛造りの酒に、情熱を傾けていった。
ラベルを刷新して再起を図る
創業160年の藤井酒造は「皆にちやほやされる存在」だ、と義大さんは言う。日本酒の製造は免許制で、新規取得は非常に条件が厳しい。だから、競争が少ない。また、変わらないことが美徳とされる雰囲気もあった。
しかし、生産量が年々低下し、業界全体が縮小する中で、変わらないことはもはや美徳ではなかった。
2017年に義大さんが取り組んだのは、ラベルの刷新と商品ラインナップの整理だ。
「父の代は日本酒の衰退スピードが一番速かった時代です。売り先を増やすことを優先するため、同じ酒をラベルだけ変えて出すこともあり、商品ラインナップが混乱していました。まずはそれを整える必要があったんです」(義大さん)
その頃、獺祭が一世を風靡し、原料米や精米歩合に注目が集まるようになっていた。そこで義大さんは、原料米の品種ごとに酒を整理した。


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