それでも、3年から5年は外で働いてから戻ろうと決めた。競争が少ない日本酒業界で、自分の視野を狭めないようにするためだ。
2009年に帰国して入社したのは、東京のマーケティング会社だった。当時広がり始めていたクレド経営に力を入れ、社会貢献を重視していたことに惹かれたという。
6代目が初めて日本酒に惚れた瞬間
2013年、義大さんは家業に入った。このとき義大さんは、日本酒を単に「日本人に誇りを持ってもらう」ためのツールだと考えていた。
「実は、日本酒そのものをおいしいと思ったことがなかったんです。カリフォルニアでよく飲んでいたワインと比べると、日本酒は化学的で薄っぺらいと感じていました」(義大さん)
しかし、父が造った日本酒を口にした義大さんは衝撃を受けた。
父・善文さんは2008年、久しく行っていなかった「生酛(きもと)造り」を再開している。海外で評価を得た翌年のことだ。「世の中にない酒」なら売りやすいだろうと、実験的に造ってみた酒だった。
100年以上の歴史がある酒米「雄町」の米を40%まで磨き、生酛造りで仕込んで熟成させたその酒は、ワインに似た複雑な味わいを持っていた。
生酛造りとは、日本酒のもととなる「酒母」を作る際の昔ながらの手法だ。
日本酒は、酵母が米のデンプンをアルコールに変えることで造られる。酵母を増やすための酒母は、酵母は生育できるが、雑菌は繁殖できない酸性にする必要がある。このとき、蔵の空気中にいる自然の乳酸菌に乳酸を作らせる手法が生酛造りだ。


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