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「10年前飲んだ酒が忘れられない」と東京から客が…かつて「日本一」に輝いた酒蔵が今「労力が倍」な昔の酒造りに賭けたワケ

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藤井酒造
藤井酒造の事務所となっている建物は、大正期のものだという(写真:筆者撮影)
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善文さんはその後も、2人の弟とともに手を打ち続けた。

1999年、醸造用アルコールの添加をやめ、全量純米蔵に転換。

2007年には、ロンドンで開催されたコンクール「IWC2007」に出品し、SAKE部門の純米吟醸・大吟醸部門で、最高金賞トロフィーを受賞。この海外での実績を、その後の国内プロモーションで押し出した。

ロンドンで開催されたコンクール「IWC2007」に出品し、SAKE部門の純米吟醸・大吟醸部門で、最高金賞トロフィーを受賞した「龍勢 黒ラベル 純米大吟醸」。ふくらみある旨みにしなやかな酸が重なり、厚みのある味わいがじんわりと広がる(画像提供:藤井酒造)

封印、復活、新ブランド、全量純米、海外評価。判断の中身は毎回違うが、型は同じだ。この蔵は看板を守るために、造り方と売り方を変えてきた。

家業を継ぐ気はなかった6代目はアメリカへ

ここからは、6代目である義大さんの側から見ていく。

1983年に生まれた義大さんは、120年続く家業に対し、視野の狭さやしがらみを感じていた。カリフォルニアの大学へ進学したのは、家業を継がないつもりだったからだ。

「商売人の家に生まれたので、ビジネスには興味がありました。キャリアのプラスになるだろうと、アメリカで最先端のマーケティングを学ぶことにしたんです」(義大さん)

しかし、初めて日本を客観的に眺めた義大さんは、日本人だけが自国の悪口を言い、自らのアイデンティティを否定する姿を見て、おもしろくないと感じた。

「海外に出て、息苦しいと思っていた日本がいとおしくなったんです。日本人が日本を好きになるようなことをしたいと考えたとき、家業の酒蔵こそ、ピッタリな仕事だと気づきました。江戸時代から続いてきた家業を、自分の代で途絶えさせたくない。継がないために飛び込んだアメリカで、僕は家業を継ぐ決心を固めました」(義大さん)

江戸末期から藤井酒造に残る酒蔵を改装した「酒蔵交流館」では、龍勢や夜の帝王の無料試飲もできる(写真:筆者撮影)
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