ところが、発表当日の夜から空気が変わり始める。B案のうさぎを駅員にしたイラストやホラー風のイラスト、さらに夜中にカメラに向かいダッシュする動画や、ワンオペ主婦となった動画が連日投稿されたのだ。生成AIで作られたとみられる動画も多く、B案への反応も「だんだんかわいく見えてきた」「B案しか考えられなくなった」と好意的なものが増えていった。
わずかな期間で「不気味」と不評だったキャラが「かわいい」に変わる。いまSNSでは、最初から万人に好まれそうなキャラクターよりも、思わず誰もがいじりたくなるキャラクターのほうが、爆発的な人気を得る可能性がある。
最初は「子どもが泣きそう」と言われていたミャクミャク
この展開で思い出されるのが、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」だ。赤い細胞のような輪にいくつもの目、青い体という見慣れない姿は、2022年の公式キャラクター最終候補3案の発表当初「気持ち悪い」「怖い」と酷評された。
一方で、その異形ぶりはSNSのネタとしての適性が抜群だった。発表当初からネットミームをもじり「コロシテくん」などと呼ばれイジられていた。その後、公式キャラクターへの起用と「ミャクミャク」という愛称が発表された時も「かわいい」「子どもが泣きそう」と賛否両論だった。しかし「ミャクミャク様」と呼ばれ、神話上の生物のように描かれるなど、無数のファンアートやパロディーを生んだ。
公式も早い段階で二次創作のルールを整え、個人が非営利で作品を作り、SNSに投稿することを認めたことも功を奏した。そして2025年、大阪万博本番が始まってからの人気ぶりは誰もが知るところだろう。グッズが相次いで売り切れるほどの人気者になった。
さらに歴史をさかのぼれば、2008年に発表された奈良県の「せんとくん」も不評→人気のケースだ。仏を思わせる童子に鹿の角を生やしたデザインに「かわいくない」「怖い」「仏様を侮辱している」と批判が集まったが、強烈な見た目は格好の話題となり、ネットにはイラストやパロディーが広がり徐々に人気に。せんとくんは平城遷都1300年祭終了後も姿を消さず、2011年には奈良県の観光マスコットにもなった。
共通するのは、万博、鉄道など無難さが求められるもののキャラクターながら攻めたデザインで、結果見る人が思わず何か言いたくなる「ツッコミどころ」となり、大喜利のようにSNSで反応が拡大していったことだ。逆に整いすぎたキャラクターは、多くの人に嫌われない代わりに、語る言葉も生みにくく、特にSNSでは目立たずに沈んでしまう。


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