筆者がいちばん不思議に思ったのは、「なぜ両家の親をわざわざ日本にまで呼ぶのか」ということだった。
3人で日本を楽しんだ後、夫の実家と妻の実家にそれぞれ立ち寄り、妻の両親と一緒にアメリカへ帰ればいいのではないかと思い、たずねてみた。すると、返ってきた答えに驚かされた。
「子どもを連れて中国に帰ると、全員が休めないうえに面倒なことが多いので、わざわざ避けた」というのだ。その理由には、中国の濃厚な親族関係が影響している。
先ほど、孫の世話を通じて親子関係が濃厚であることを説明したが、実は親族間の付き合い方も日本よりはるかに密接である。
結婚式は両家の経済力や、影響力を誇示する場として使われることが多く、主人公であるはずの新郎新婦はお人形のような存在になりがちだ。結婚式が社交の口実になってしまうのである。これは「嫌だからやらない」で済む話ではなく、特に地方においては必ずやらなければならない恒例行事となっている。
子ども誕生後も親戚付き合いに苦労
そして子どもが生まれたら、村中の人を招いて数日間にわたる宴会を開き、生後100日を祝うためにも親戚全員を招待してホテルで豪華な宴会を開催する。
そこで親しい友人や親戚から祝儀(主に「紅包」と呼ばれるお祝い金)をもらうことになるが、そのお返しをするために金額をしっかりと記録しておかなければならない。万が一、招待し忘れた親戚がいれば、その後長らく気まずい関係が続いてしまうこともある。
宴会だけでなく、帰省中はずっと親戚の対応に追われるため、到底ゆっくり休むことはできない。Aさん夫婦はまだ宴会を開いていない。子どもに不慣れな環境でそのようなストレスを与えるべきか、せっかくの休みなのに若い夫婦がよく知らない親戚への対応で疲弊する日々を送るべきか。そして両親たちも、待望の孫をみんなにお披露目したい反面、宴会の準備を本当に行いたいのだろうか——。
親子で話し合いを重ねた結果、面倒な親族付き合いは避け、両家の両親・夫婦・新生児の全員がリラックスでき、景色・食事・買い物を楽しめる場所で集まり、いい家族の時間を過ごそうという結論に至ったという。
その結果、Aさん夫婦が大好きな場所であり、すべてのニーズを満たしてくれる「日本」が選ばれたというわけだ。


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