プレリュードで注目されるのは、ホンダ車で初採用となった制御技術「Honda S+ Shift(ホンダ エスプラスシフト)」だ。
モーター駆動でありながら加減速時にエンジン回転数を緻密にコントロールし、まるで有段トランスミッションを介しているかのようなダイレクトな駆動レスポンスを演出する。加えて、エンジン回転数と同期したエンジン音をスピーカーから流す「アクティブサウンドコントロール」が、スポーツドライビングの気分を高めてくれる。
実際にS+ Shiftを作動させて加速を試みると、仮想変速とエンジン音の演出の作り込みに感心させられた。ただ、もともとハイブリッド用の効率重視で設計されたエンジンだからか、6000回転付近でシフトアップする手前でわずかに伸びが鈍る感覚がある。
エンジン音の演出は楽しいものの、やはり物足りなさもあった。身体に伝わる振動とシンクロしていないからだろう。S+ Shiftとアクティブサウンドコントロールは「遊び」としてはうれしい反面、この機能を目当てに車を買うというよりは、オマケの1つだと感じた。
プレリュードには「スポーツ」「GT」「コンフォート」の3つのドライブモードが用意されている。さらに、パワートレイン、ステアリング、サスペンション、エンジンサウンドなど6項目を個別に設定できるインディビジュアルモードも備わる。
一般道や高速道路を走らせている限り、スポーツモードとGTモードの差は大きいように感じなかった。はっきり違ったのはコンフォートモードでふわふわとした感覚があった。個人的にはGTより柔らかくする必要はあまりなく、相当に荒れた路面でショックを和らげたいときにコンフォートを活用するのがよいと思う。
気になったのは、ロードノイズの伝わる量が相対的に多く感じられることだ。路面コンディションが比較的よいところでも、高周波のタイヤノイズが耳に届く。履いていたタイヤの特性かもしれないが、もう少し静かだったら、より快適なのにと思う。また、ブレーキをかけて停止する瞬間に、必ず足回りのどこかからきしっという音が聞こえた。
ただ、どちらも音楽でも聴いていれば忘れてしまう程度で、それにはBOSEサウンドシステムがなかなか効果的である。8スピーカーのシステムが最初から付いてくるのは、静かに走れる時間が長いこのクルマの性格を考えても理にかなっている。
洗練された車線認識と、上級モデルとしての課題
本連載では、長距離移動の快適性を支える先進運転支援システム(ADAS)の性能を重視している。
ホンダはADASを「Honda SENSING」という呼び名で展開している。衝突軽減ブレーキやACC(アダプティブクルーズコントロール)、LKAS(車線維持支援システム)などベーシックな機能を搭載したHonda SENSING、検知範囲を車両の全方位に拡大し、交差点や車線変更時のリスクをより低減したHonda SENSING 360、360に特定条件下でのハンズオフ(手放し)機能を付加したHonda SENSING 360+があるが、プレリュードは専用セッティングが施されたHonda SENSINGを標準装備している。
試乗した条件下で特に好印象を抱いたのはLKASだ。車線の中での位置取りに違和感が少なく、長距離移動のドライバーのストレスを確実に軽減してくれる。認識状況は常に10.2インチのデジタルメーター上にグラフィック表示され、自車と左右の車線、前走車や隣車線の車といったシステムが認識している周辺状況を確認できる。
一方で、ACCについて高速道路での渋滞末尾などで前方に停止している車両を認知した際、ブレーキの介入タイミングが少し遅めに感じられる場面があった。ドライバーが「大丈夫か」と少し身構えたところで自動減速が始まるため、もう少しスムーズかつ手前からじんわりと減速するような味付けの方が、この車のキャラクターにはふさわしいように思う。
インテリアの質感は評価が分かれそうだ。 ホワイトとグレーを基調とした室内は2ドアクーペとしては非常に開放感がある。一方で、600万円を超える車のシートがパワーシートでないのはどうなのだろう。また、シートは前席のみがレザーで、後席は黒のファブリックで形状もシンプル。2ドアクーペの後席なんて使わないという割り切りかもしれないが、プレミアムカーとして中途半端な印象を受けた。
もっとも、いくつか気になった点があるものの、それが車全体の魅力を大きく損ねているとは思わない。330kmを走り終えて心に残ったのは、凹凸をスムーズに丸める洗練された足まわりや豪雨でも破綻しない接地性、ステアリングの応答性、そしてエンジンをほとんど起こさずにモーターでの滑らかな走りである。
週末に、長距離を爽快に、疲れなく走り抜ける道具として見れば、この新型プレリュードは実に頼もしい仕事をしてくれる。浮ついたデートカーではなく、大人となって余裕ができたホンダ・ファンがドライブを楽しむための国産GTカーだった。


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