もう1つ、葉山町が取り組むのが「評価」の見直しだ。不登校の子どもをめぐっては、欠席が続けば学習の遅れや進学への影響も心配になる。
そこで葉山町が重視しているのが、「学校に何日来たか」ではなく、「何を学び、どう育ったか」という視点だ。実際、フリースクール・オルタナティブスクールでの学習も、教科指導が明確であれば、そこでの学習を評価に反映させる。
「文科省では、年間30日以上の欠席を『不登校』として捉えています。ただ、高校では、法定単位時数の3分の2出席していれば履修が成立するという考え方があります。『不登校』とされることと、『学んでいない』ことは、必ずしも同じではないんです。大切なのは、『不登校かどうか』だけで判断するのではなく、その子が実際にどんな学びをしているのかを見ることだと思っています」
神奈川県立高校の入試では、不登校などで成績がつけられず「斜線」となった期間について、保護者の申請により入学選抜の評価対象から外すことができる。中学3年生で頑張った教科だけを評価対象とする申請も可能だ。
「30日欠席」という数字だけでは見えない、一人ひとりの学びや成長をどう評価するか。葉山町は、不登校をめぐる評価のものさしそのものを見直そうとしている。
子どもを主語にした教育へ
こうした取り組みは、不登校支援のための個々の取り組みに見える。しかし、稲垣氏によれば、その根底には1つの考え方がある。その「幹」となるのが、町内各校に期待される社会的役割や目指すべき学校像を明確にすることを目的に、23年に策定した「スクールミッション」だ。
「『社会の変化、葉山のまちづくりとともにある学校』『夢や目標をみつける力、みつけたときに行動できる力が学べる学校』『進取の気象に富んだ学校』、3つを掲げました。このミッションを根底に、各学校にスクールポリシーをつくってもらったんです。ミッションが幹で、そこから太い枝としてスクールポリシーがある、というイメージです」
各校がスクールポリシーを考えた結果、町内6校すべてが掲げることになったのが、「自ら学び、考えて行動できる子」という言葉だった。
「私が決めたわけではありません。校長先生を中心に6校で協議し、それぞれの学校で先生たちとも一生懸命考えてつくった結果、6校とも同じ言葉になりました。葉山で子どもたちを育てるうえでどこを目指すのかは、みんなの中で明確になっているんです」
では、子どもが「自ら学び、考えて行動できる」ようになるためには、何が必要なのか。ここで稲垣氏が重視するのが、「子どもの権利」だ。
「一人ひとりの子どもが意見を表明する権利など、子どもの権利がしっかり保障されていく中で、初めて子どもたちは自分で学び出し、自分で考え行動に責任を持つようになると思うんです」


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