「年間30日以上休んでいても、今は普通に学校に来ている子もいます。一方で、29日しか休んでいなくても、学校にも家庭以外の居場所にもつながっていない子もいる。だから私たちは、30日以上休んだかどうかだけではなく、その子が今、『実質的な孤立』の状態なのかどうかを見るようにしています」
そう話すのは、神奈川県葉山町教育委員会教育長の稲垣一郎氏だ。稲垣氏が捉える「実質的な孤立の状態」とは、「学校・校内教育支援センター、フリースクール、オルタナティブスクールなど〝学びや人とつながる場“のいずれにも接続できていない状態」を指す。
なぜ、このような視点を持つようになったのか。稲垣氏が不登校を考えるうえで大きな土台となっているのが、高校現場での経験だ。県の教育行政に長く携わり、通信制単独校の創設にも関わってきた。そこから義務教育の現場に来て強く感じたのが、「高校と小中学校では、不登校の成り立ちが違う」ということだった。
「高校は、生徒が自分で『進学する』と決めて来ているので、学校に来られないときも、本人なりに理由がわかっていることが多い。でも小・中学校では、『どうして学校に行けないのか自分でもわからない』という子が少なくありません」
学校に行けない背景には、学校との関係や本人の特性、家庭の状況などさまざまな要素が絡んでいることもある。そんな子どもたちを、「30日以上欠席」という1つの基準だけで捉えることには限界がある。
「子どもが学校に行かなくなると、親は心配のあまり、仕事や自分の生活を後回しにして子ども中心の生活になってしまうことがある。当然です。でも、私は保護者の方々に『可能な範囲で、仕事に行くなどご自身の時間を過ごしてください』とよく言うんです。子どもは親が思う以上に親を見ていますから。親がいつもどおり、自身の生活を大切にしている姿を見ることも、子どもにとっては大事なんですよね」
「どこにもつながっていない子どもの数をゼロにする」
そんな中、葉山町が教育ビジョンに掲げたのが、「どこにもつながっていない子どもの数をゼロにする」という目標だった。


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