今年6月には星野リゾートが明治期の名建築物として国の重要文化財に登録されている旧奈良監獄を保存・再生した「星のや奈良監獄」を奈良市内にオープンした。客室は全48室で全室スイートルーム。独居房などをつなぎ合わせて1つの客室に整備した。「奈良監獄ミュージアム」も併設。話題性は抜群だ。
JR東海も近鉄奈良駅の近くにハイアットと提携した100室規模のラグジュアリーホテルを2030年度に開業する予定であり、こうしたエッジの利いたハイエンドなホテルが牽引する形で、奈良県内で宿泊するモチベーションが徐々に醸成されていくだろう。
「奈良の夜はつまらない」という指摘も以前からある。多くの飲食街が夜が更ける前に店を閉めてしまうからだ。ナイトライフ対策として、奈良市は「奈良市には世界的に有名なバーテンダーがおり、若手バーテンダーの出店も加速している」とアピール。市内のBAR(バー)マップを作成するなど、夜の需要喚起に躍起だ。
「鹿にせんべいをあげて帰ってしまう」
ただ、ホテルやナイトライフが充実すれば、宿泊者数が増えるかというと、そう簡単ではない。「奈良公園の鹿にせんべいをあげたら帰ってしまう人もいる」とある観光関係者が嘆いた。実際、観光客は国内・インバウンドともに奈良公園付近に集中し、他エリアをほとんど訪れていないという現状が「奈良県の観光データ」に示されている。
宿泊者数が少なく、観光エリアは奈良公園付近のみ。こんな観光の現状を県は「安い(観光消費額が非常に少ない)、浅い(奈良の滞在が短く、奈良を深く知らない)、狭い(観光客が奈良公園周辺に集中)」と表現している。現状脱却のカギは日帰り観光から滞在型観光への転換だ。

