奈良県は京都に劣らず観光資源が豊富だ。東大寺、法隆寺、薬師寺、唐招提寺など多数の仏教建造物に加え、平城宮跡、飛鳥・藤原の宮都などの遺跡、吉野など紀伊山地の霊場と参詣道などその内容は多岐にわたる。京都と同じく、多くの人が修学旅行などで一度は奈良を訪れているはずだ。2024年の観光客数は4362万人(出所:「奈良県観光客動態調査」)。全国の観光客数に関する公式統計がなく、都道府県別の順位は不明だが、決して少ない数字ではない。
ところが、県内宿泊者の数は283万人で全国44位(出所:2024年観光庁「宿泊旅行統計調査報告」)。京都市の1630万人とは対照的である。1人あたり観光消費額も奈良県は6606円(出所:2024年「奈良県の観光データ」)。京都市の3万4025円とは大きな開きがある。むろん、この理由は奈良で宿泊しないことから、宿泊料金や飲食費が県内に計上されないことによる。
日帰り客が多い奈良観光
「奈良観光は京都や大阪を拠点に日帰りという人が多い」と多くの観光関係者が口をそろえる。日帰りが多いのは宿泊施設が少ないからという見方があるが、ホテル建設が進んだ近年では必ずしも正しくない。宿泊旅行統計調査によれば2025年の奈良県内の宿泊施設における客室稼働率は50.9%で、全国平均の61.6%を下回る。70%を超える東京、大阪、福岡と比べるとずいぶん余裕がある。
つまり、奈良県の宿泊者が少ない理由は、宿泊施設のキャパシティが足りないからでなく、宿泊しようというモチベーションが足りないからだ。あるいは宿泊施設が少ないから宿泊は無理だという思い込みがあるのかもしれない。だが、「ここに泊まりたい」と思わせる魅力的な宿泊施設が増えれば、それがフックとなって宿泊施設が多数存在することが知られるようになり、県内で宿泊しようと考える人が増えるかもしれない。

