NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の内容をめぐって騒動が起きている。8月23日に放送された第32回「賤ヶ岳の決闘」での戦国武将・中川清秀の描かれ方が史実とかけ離れているとして、ゆかりのある大分県竹田市と大阪府茨木市が連名でNHKに文書を送り、「遺憾の念を禁じ得ない」と申し入れたのだ。
両市はドラマにおける演出や脚色を「表現の自由」として認めながらも、歴史を題材にする以上、「できる限り正確な史実を尊重すること」を求めている。NHK側は、大河ドラマは歴史的事実を題材にしたフィクションであるとしたうえで、地域からの指摘を真摯に受け止めるとしている。
問題になった中川清秀は、摂津の茨木城主を務めた戦国武将である。1583年の賤ヶ岳の戦いでは羽柴秀吉方として参戦し、大岩山砦を守って柴田勝家方の佐久間盛政軍の攻撃を受け、討ち死にしたとされている。ところが本作では、清秀は秀吉方を裏切って柴田方に寝返り、その後、前田利家に討たれる人物として描かれた。単に死亡した場所や会話を変えたという程度ではなく、「秀吉方として戦って死んだ武将」を「秀吉を裏切った武将」に変えてしまったのだ。
創作なしに歴史ドラマは成り立たないが…
もちろん、ドラマの中で史実とされることを一切変えてはいけないというわけではない。そもそも歴史ドラマは、史料に書かれていることだけでは成立しない。歴史上の人物が誰と何を話し、そのとき何を考え、どのような感情を抱いていたのか、その大半は史料には残っていない。
ドラマはそうした空白を想像力で埋めることで、過去の出来事を物語として立ち上げる。複数の出来事を1つにまとめたり、実在しない人物を登場させたり、人物同士の関係を整理したりすることもある。「豊臣兄弟!」自体も、記録が豊富ではない豊臣秀長を主人公としている以上、大胆な創作なしにはそもそもフィクションとして成立させることが難しい。
ただ、どんなことでも自由に創作してよいわけではない。清秀が戦場で何を考えていたかというような史料に残っていない部分を創作することと、裏切りという根拠のない出来事を付け加えることは、意味が大きく異なる。後者の場合、単なる脚色ではなく、その人物に対する視聴者の評価そのものを書き換えることになってしまうからだ。


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