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なぜ『豊臣兄弟!』は郷土の英雄を「裏切り者」にした? 自治体も黙っていられなかった"創作"の履き違え

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中川清秀 豊臣兄弟
史跡賤ヶ岳の碑(写真:Hyper9/PIXTA)
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しかも現在では、大河ドラマと地方自治体の関係は以前にも増して密接になっている。大河に登場する人物や舞台となった土地は、それ自体が巨大な観光資源になる。自治体は大河ドラマに合わせた資料館などを開設し、史跡を整備し、イベントを開催し、「○○ゆかりの地」として観光客を呼び込む。もはや大河ドラマは単なるテレビ番組ではなく、自治体の観光政策や地域ブランドと結びついた巨大な文化事業でもある。

だからこそ、今回、自治体が声を上げたことにも一定の合理性がある。中川清秀は全国的には織田信長や豊臣秀吉ほど有名ではない。だが、茨木市にとってはかつての茨木城主であり、竹田市にとっては岡藩初代藩主・中川秀成の父である。

両市は中川家を通じた歴史的な縁から、2013年に歴史文化姉妹都市となっている。つまり、全国の視聴者にとっては「大河ドラマの一話に登場した武将」にすぎなくても、地域にとっては長年にわたって史料を保存し、その足跡を伝えてきた郷土史の重要人物なのである。ドラマの側から見れば脇役でも、地域の歴史から見れば脇役ではない。その認識の落差が、今回の騒動を生んだ大きな要因である。

制作側にも自由に解釈する権利はある

一方で、自治体から抗議があったからといって、史実を変えてはいけないわけではない。作品を作る側には歴史を自由に読み替える権利がある。そもそも歴史研究そのものが、新しい史料の発見や解釈によって常に更新されている。現在「史実」とされているものが絶対不変の真実であるとも限らない。

自治体の期待する「郷土の英雄像」にドラマが従わなければならないとなれば、歴史ドラマは地域のPR映像になってしまう。この意味では、NHKが「歴史的事実を題材にしたフィクション」であると説明すること自体は間違っていない。

歴史ドラマに創作は不可欠であり、史実通りに再現することだけが正解ではない。しかし、史実を変える自由には、その改変によって何を描こうとしているのかを作品そのものによって納得させる責任も伴う。大河ドラマは事実上、日本中を巻き込む壮大な文化事業となっている側面があるからこそ、それを作る立場の人間にはそれなりの責任が求められるのである。

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