先の清水さんは、「誰でも簡単に手に入る環境がある」と話す。
国は今年5月、せき止め薬など特定の成分を含む市販薬を「指定乱用防止医薬品」と位置づけ、ドラッグストアなどでの販売規制を厳しくした。18歳未満に対し、大容量品や複数個の販売が禁止された。だが、複数のドラッグストアを回れば実質、何箱でも購入できる。
「他にも、友人から買ったり、医療機関で処方してもらったり、オンライン診察でも簡単に手に入ります」(清水さん)
こうした入手経路の一つとして、近年指摘されているのがSNSだ。
絵文字や隠語を使ったSNSの投稿
「#お薬もぐもぐ」
いまXでこのハッシュタグを検索すると、絵文字や隠語などを使って購入を持ちかける投稿が次々と出てくる。薬は動物の絵文字で表現する。そして、その薬が「ある」ことを示す場合は、昆虫の「あり」の絵文字が使われる。
不正流通薬品に詳しい、岡山大学薬学系の吉田直子教授は言う。
「医薬品の名前や成分名、商品名をそのままテキスト入力して取引を持ち掛けると、投稿が削除される可能性があります。それを避けるため、絵文字などを使ってストレートに表現しないようにしているとみられます」
Xから、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」に誘導する場合もあると言う。
「投稿する側も、検索に引っかからないよう工夫しています。隠語を使っている時点で、自分たちが問題のある行為をしているという認識はあるのではないかと思います」
吉田教授が2022年1月~23年3月までにX上で確認した「#お薬もぐもぐ」を含む投稿は約1万4000件。そのうち薬の売買の可能性がある投稿は約3300件に及び、全体の23.9%を占めた。
隠語は「#お薬もぐもぐ」だけではない。
錠剤の色にちなんだ隠語でXに投稿され、売買される薬もある。隠語は次々と生まれ、国もネットパトロールなど対策を強化しているが、対応が後手に回る状況が続いているという。

