概算要求にすぎないから、年末にまとまる予算総額はこれより縮小するかもしれないが、それを信じる、信じないはマーケットの自由だから、都合よく、突然信じないと言い出して売り仕掛けることができる。
実際のところ、私個人の予想は、補正予算は結局、従来どおりになると思うし、そうなることを高市早苗首相本人が気にしていないと思う。飲食料品の消費税を、実施2年後には1%から8%へと戻すのも、今、財政懸念で攻撃を受けているから、戻すと言っているだけで、実現性は何にも考えていないし、実現させる気もないのではないか。
同様に、補正予算も、今でさえ、ガソリン補助金を安直に延長したのだから、来年度も延長するだろうし、それには補正予算が必要だ。災害は毎年起こるし、災害対応と称して、結局、国土強靭化などの名目で「普通に」無駄の多い補正予算となるだろう。その可能性も、今は、まだ出てこないから、まったく考慮にも入れていないし、心配もしていない。このネタも、マーケットは、彼らのタイミング、彼らの都合で持ち出してくるだろう。
マーケットになめられているときは、いかなる材料も与えてはいけない
しかし、それよりも強烈なインパクトがあったのが、2つ目のネタ、「アメリカのベッセント財務長官が、日本の財政・金融政策に直接注文をつけた」というニュースが世界中に流れたことだった。
片山財務大臣と会ったときには、円安と財政懸念対策を、植田日銀総裁と会ったときは金利引き上げを、それぞれ具体的に直接要求したと報道された。アメリカでは、財務省での部下にあたるエリン・ブラウン次官が直接プレスインタビューに答え、日本に「財政の持続可能性・利上げへの道筋を市場に明確に示すことが重要と伝えた」などと明かした。
さらに、一部の報道では「リフレ政策をやめろ、アベノミクスは成功した、タカイチノミクスは、ダメだ、やめろ」といった趣旨の発言をしたとされている。さらに別の報道では、ベッセント財務長官が今年5月に来日したときに、片山財務大臣に長時間にわたって、財政金融政策への疑問と不満をぶちまけた、とされている。さらにさらに、現在の高市政権への政策アドバイザーが円安のメリットを進言していることに強い疑問と不満を述べた、という報道まで出てきた。
ここまで直接的に金融財政政策に注文を付けたのだとしたら、異例中の異例だし、しかも、その非難の強さ、執拗さは日米関係において、過去の歴史にはまったくなかったことである。
これは、もちろん、米国債の状況という彼らの事情があるからだが、そんなことは関係ない。ベッセント財務長官がそう言ったというニュースが重要なのであり、その通りに動かなければ、いちいちそれをネタにマーケットは仕掛けることができる。一番強い円安防止策、一番強い財政再建政策のスタンスを取らなければ、足りない、という解釈をして、日本売りを仕掛けてくることができる。
とにかく、マーケットになめられているときは、いかなる材料も与えてはいけないのだ。もちろん、マーケットはどんなことでも材料にしかねないという面はあるが、それでも、あまりにわかりやすい材料は、仕掛けとしては絶好の材料だ。
なぜなら、誰にでも理解できる単純なイベント、材料で、単純なロジックで、方向性にも疑問の余地がないからだ。日本がだめだ、というような批判をアメリカの財務長官から直接されている時点で終わりなのである。そして、最強に致命的なのは、マーケットに「なめられている」ということである。アメリカも、ドナルド・トランプ大統領は「TACO」という流行語をマーケットに作らせてしまった時点で終わりなのである。


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