このような重心を知らないまま就職先を選ぶと、ズレは起こりがちです。世間で評価の高い職場や、名の知れた業界に飛び込んだものの、3年たって疲れきり、自分は能力が足りないんだと思い込んでしまう。
日本では新卒一括採用のやり方が長く続いてきたので、自分の重心と仕事内容が合うかどうかを考える機会が少なく、最初の3年ですり減ってしまう若い人が後を絶ちません。でも、メタ分析の数字を信じるなら、その人に足りなかったのは能力ではなく、適合だった可能性のほうが高いのです。
自分の重心を知ることは、自分の才能を額に入れて飾るためではありません。ミスマッチを減らすための、地図づくりです。職場への満足度が高く、「辞めたい」という気持ちが弱い人に共通していたのは、自分の性格や価値観と、職場の求められる働き方がよく合っていることでした。特に関係があったのは、組織の雰囲気よりも仕事内容そのものとの相性でした。
もちろん、この研究は「合っている人ほど満足しやすい」という関係を示したもので、「環境を変えれば必ず満足度が上がる」と証明したわけではありません。それを踏まえても、人材育成だけに目を向けるのではなく、「その人に合った環境で働けているか」という視点を取り入れることは、大きな意味があると言えそうです。
仕事を作り替えて才能を輝かせる
では、今すぐ転職できない人はどうすればいいのでしょうか。同じ仕事をしているのに、生き生きと働く人もいれば、いつも疲れて見える人もいます。この違いは、生まれつきの才能の差ではなく、「仕事を自分で作り替えているかどうか」の差なのかもしれません。
それをたしかめたのが、セントルイス大学のルドルフらによる大規模なメタ分析です。
ルドルフらは、122の独立サンプル、合わせて3万5670名の働く人を対象にした研究をまとめ上げました。そして「ジョブクラフティング」、つまり自分の仕事の範囲やタスク、人とのつながり、意味づけを自分から組み替えていく行いが、どんな成果につながるのかをていねいに調べたのです。


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