時宜を得たタイミングで発行された『プライベート・エクイティ資本主義が世界を食い尽くす』は、プライベート・エクイティ(以下PEファンド)がアメリカの企業ばかりではなく、住宅、医療、介護、教育、刑務所、公共サービスにまで浸透し、いかにして富を吸い上げているかを告発した本である。
本書の著者ブレンダン・バルーは、アメリカの弁護士で、かつては連邦検察官として司法省反トラスト局のPEファンド担当特別顧問を務めた経験を持つ。
原題はずばり『PLUNDER』、つまり「略奪」だ。著者は、Private Equityという上品な看板を剥がしてみれば、その下には悪魔の顔がのぞいていることを警告している。
いや、警告とは言えない。『PLUNDER』というのだから、著者は最初から判決を言い渡している。推定無罪の原則は採用されていない。
本書の特徴は、その証拠とも言えるPEファンドの事例の豊富さにある。さすがに法律家だけあって、事例の数のみならず、資料や取材から調査した詳細な内容に驚かされる。
しかも、それぞれの事例の描写は、あたかも短編小説集を読んでいるかのようにドラマティックで飽きさせることがない。そして、読み進めるほどに読者は腹立たしさを超えて恐怖すら覚えることになる。
これら豊富な事例を通した著者の問題意識は、金融ビジネスとはなんら関係のない、普通に生活する人々の日常にPEファンドが入り込んでいるという点にある。普段の生活に必要で、人々が容易には利用をやめられないサービスを提供する重要な事業、PEファンドはそれを意図的に狙っているというのが著者の重要な指摘でもある。
そもそもPEファンドのビジネスモデルとはなにか
ただし、本書はPEファンドのビジネスモデルについて中立的な説明がやや不足しているように思える。
告発状としては見事だが、読者にとって被告人の悪事を延々と聞かされる一方で、その被告人がそもそも何者なのかを十分には教えてもらえない。その点が少し不親切だ。
私はPE業界の専門家ではないが、ファイナンス学者として、一般読者が本書を読むうえで、本書との間に一本の補助線を引くことができる。それが本書に対する今回の私の役割だろう。


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