また山下氏が売り上げとともに喜びを感じていることがある。
「オープンの前の日は不安と緊張で眠れませんでしたが、開店前に入り口を見ると、40代ぐらいの男性の姿がありました。まずはホッとするとともに嬉しく感じました」(山下氏)
というのも、今回の異色コラボの松屋銀座側からの目論見が「新たな客層の取り込み」だったからだ。牛めしの松屋の客は男性が圧倒的に多く、松屋銀座の主要客層である40代以上の女性と異なっている。
「牛めしって食べたことないわ」
ただ、銀座の松屋と言えば、100年続く老舗で高級なイメージ。対する牛めしの松屋は庶民的なチェーンと、相反する存在だ。新たな客層を取り込むのはいいが、従来の客層から違和感を覚えられてしまう可能性もあった。
しかし、そのことについても今回は、狙い通りに運んだという。
「『牛めしって食べたことないわ』というお客様も実際にいらっしゃって、購入してくださっています。従来のお客様に新たな商品を提供し、満足度を向上させることも、今回のコラボの目的の一つでした」(山下氏)
そもそも、百貨店の松屋と牛めしの松屋、“名前”以外に共通点がない2つの企業が、なぜコラボすることになったのだろうか。始まりは2019年、松屋創業150周年のイベントとしての企画だったという。最初は百貨店側から松屋フーズへの打診であったが、その当時は、キッチンカーでの牛めしの販売やロゴの入ったグッズ等の展開を考えていたそうだ。
それがコロナ禍で流れてしまい、再び2025年の「松屋銀座開店100周年」のタイミングで、今度は地下食品売り場の1週間限りの催事として声をかけた。
松屋銀座広報によると「名称が同じなので間違い電話がかかってくることなどがよくあり、僭越ながら親近感を感じていた」のだそうだ。
なお、松屋はもともと「鶴屋呉服店」として1869年に横浜で創業。のちに神田にあった松屋呉服店を買収し、東京に進出。東京で初のデパートメントストア式店舗を構えるが、関東大震災で消失。1925年に今の場所に新たな店舗を建築し、本店とした。
以上の経緯から、2019年が創業150周年、2025年が本店開店100周年ということになる。
そして、2025年の1週間限定の催事が「松屋銀座の食品売り場での催事における過去最高の売り上げ」と、大成功だったことが、今回の常設店の出店へと結びつく。今度は松屋フーズ側から百貨店への依頼となった。


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