さらに言えば、連邦議会が紆余曲折の末に昨年7月、引き上げた米国債の発行上限は41兆1000億ドルである。財政赤字があと1兆ドルも増加すれば、財務省はまたまた資金ショートを恐れて東奔西走しなければならなくなる。
新たにFRB(連邦準備制度理事会)議長に就任したケビン・ウォーシュ氏が、金融政策に関する情報発信を抑えていることも、金利上昇の一因となっている。ウォーシュ議長は「フォワードガイダンス」を削減し、市場との対話を見直すことで金融政策本来の自由度を取り戻したいと考えている。だが債券市場は、「FRBが方向を示してくれない」と疑心暗鬼になっている。
現在は「逆クラウディングアウト現象」が起きている?
とまあ、長期金利が上がる理由には事欠かないのだが、この件について8月20日のイギリスFT(フィナンシャルタイムズ)に面白い記事が出ていた。政府だけが問題なのではない。AIがらみの民間投資があまりにも活発なので、「クラウディングアウト」が起きているではないか、というのである。
「The slow sucking sound of AI--Searching for signs of crowding out」
(AIによるスローな吸い込み音~クラウディングアウトの兆候を求めて)
政府の財政赤字が拡大し、金利が上昇して民間部門に資金が回らなくなることを「クラウディングアウト」と呼ぶ。だから財政は健全に保たなきゃいけない、というのが経済学の基本である。ところが今回は事態が逆で、AI関連の民間投資が長期資金を吸い上げていくのが、まるで「クラウディングアウト」だというのである。
書き手は同紙の若き経済コラムニスト、ソマヤ・ケインズさん。彼女は「あのケインズ」、ジョン・メイナード・ケインズ(1883.6.5~1946.4.21)の親族に当たるのだそうだ。ケンブリッジ大学で学士と修士を得て、英財務省と『エコノミスト』誌を経由してFT紙入り。この名前、覚えておいて損はなさそうだ。
記事に曰く、「AI企業は超長期の資金を求めるから、AIインフラ整備のための債券発行が長期国債市場の価格形成を厳しくしている」。つまりデータセンター建設がラッシュになっているから政府が困っている。この事態、「逆クラウディングアウト」とでも呼ぶ方がいいんじゃないだろうか。


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