他方、性的消費という言葉には、その登場当初から、ネット上を中心に様々な反発が寄せられてきました。
それは具体的なメディアや対象を指す言葉なのか、それとも消費する主体を非難する言葉なのか。あるいは、そもそもどのようにして誰が特定のメディアや対象を「性的に消費」したと論証しうるのか。この言葉の氾濫は、一種のレッテル貼りにすぎないのではないか――。
なぜ、このような反発が寄せられるのでしょうか。
もちろん、多くのファンを抱えたメディアコンテンツへの批判自体が、その元凶であることは間違いないでしょう。誰だって、たとえ何らかの理由があったとしても、自分が好きな作品が批判されていたら、嫌なものです。
性的消費とは何を指す?
しかし、もしそれだけならば、性的消費という言葉自体に対する疑問や反論が、世に多く出ることはなかったでしょう。やはりこの言葉にはしっくりこない何かがあるのです。
実際、倫理学者の江口聡は、「萌え絵」の炎上騒動に関する論文の中で、性的消費が「何を指しているのかは明確ではなく、アカデミックな文献に現われることもほとんどない」と指摘しています1。
つまり、性的消費は専門家にとってみても、そのルーツを即座に判断することができず、またその含意を明確化することが難しいのです。
たしかに性的消費は、一般的な〈消費〉の用法から外れているように見えます。
たとえばコト消費であれば、その具体的対象を思い浮かべることが難しい場合でも、何らかのサービスの購入を前提としています。その意味において、コト消費は経済学的な意味での消費像とのつながりを維持している。
それに対して性的消費は、本章の冒頭で挙げた事例からもわかるように、金銭を介した購入以外の局面においても用いられることが多いように思われます。


※ログイン後、コメント入力が可能です。