やがて朝起きられなくなりました。起きようとすると、お腹が痛くなる。制服に袖を通そうとすると、吐き気がする。
母親は言い続けていました。
「頑張らなくていいよ」
「無理しなくていい」
「ゆっくり休もう」
それは、真摯な愛情でした。壊れてしまうより、止まっていてほしい。まずは生きていてほしい。1年が過ぎました。少年は昼夜が逆転し、外に出ることはほとんどなくなりました。
私が初めて訪問したとき、彼は布団の中で、顔を見せませんでした。声をかけても、返事はない。けれど、完全な無反応ではない。わずかに、息遣いが早くなる。
私は布団の横に座りました。何も急がない。何も迫らない。数分の沈黙のあと、小さな声が聞こえました。
「どうせ、学校に行けって言うんでしょ」
その言葉には、怒りよりも、あきらめが混じっていました。私は答えました。
「いきなり、学校に行けとは言わないよ」
「でも、止まったままでいいとも思っていない」
布団の向こうで、わずかにからだが動いたのがわかりました。
嫌になったら、すぐ戻ろう
■最初の挑戦は「家の前に出ること」
少年の最初の挑戦は、家の前に出ることでした。
玄関まで行く。ドアノブに触る。外の空気を吸う。それだけです。
「5分で戻っていい」
「嫌になったら、すぐ戻ろう」
母親は不安そうでした。


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