そこまでして本と読者を出合わせようとする背景には、出版業界の厳しい現状もある。
2026年3月末、全国の書店数は9993店となり、初めて1万店を割った。ピークだった1998年の約4割にまで減っている。さらに2026年上半期の紙の出版市場も前年同期比3.1%減。紙の書籍だけを見ても2.7%減だった。
本を出して、書店に並べ、読者が見つけてくれるのを待つ。それだけでは、本が手に取られにくい時代になっている。だからこそ、出版社が自ら新しい「出合いの場」をつくる必要があった。
積読(つんどく)は怠惰じゃない。本を“読みたい”のに、“読めない”理由
会場で参加者に話を聞いてみると、書店で一晩を過ごそうという意欲的な層だけあって「本が好き」「本当はもっと読みたい」という人が目立った。しかしそれにもかかわらず「思うように読めない」という葛藤を持つ人も多かった。
26歳の会社員女性は、もともと読書が好きだが、仕事を始めてから読書の時間がなかなか取れなくなったという。紙の本から人が遠ざかる理由を尋ねると、「スマートフォンだったり、映像とか音声で情報が取り入れやすくなっている」ことを挙げた。
20代後半で会社の同僚同士で参加した男性ふたり組から出てきたのは、さらに興味深い言葉だ。
「本は、読み始めて物語に入り込めば夢中になれる。けれど、そこへたどり着くまでの“滑走路”が結構長いのが、現代人が読書をできない原因ではないか」と問題提起した。ふたりは日頃から読書の時間を確保しているようで「イベント参加の記念」にと、それぞれ相手のために本を選んでいた。
今回のようなイベントがあると、「いつも訪れる文学や芸術のフロア以外を訪れるきっかけになり、新しいジャンルの本に出合えた」とも語っていた。


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