ネグレクト(育児放棄)傾向のある家庭の子どもにとって、日中の居場所となる教室や栄養バランスのとれた給食がなくなる夏休みは“危険な時期”だ。夏休み中に食生活が悪化して、結果的に虫歯になっても歯科医院に連れて行ってもらえない「デンタルネグレクト」が起きるケースもある。
小児専門歯科医が目の当たりにしてきた「子どもの口の中」から浮かび上がる家庭環境とは――。
「昨日は、20本の乳歯すべてが虫歯になった4歳の子が来ました」
こう話すのは、小児専門の歯科医院であるエンゼル歯科(神奈川県平塚市)の佐々木明彦院長だ。
平塚市や周辺自治体と連携している同院には、乳幼児健診の結果に問題があるなど家庭環境に懸念がある子どもたちも多く診察を受けに来る。
なかには前歯が折れているのに放置されている子もいて、親が説明するとおり目を離した隙に転んだり階段から落ちたりしたせいなのか、実際は殴られるなどの虐待を受けたせいなのか、口腔内の損傷状況から慎重に判断することもある。
だが、最も多い症例は、やはり虫歯だ。
「虫歯になっても放っておかれるデンタルネグレクトは、多くの場合、子どもの様子に十分に目を配るだけの精神的・時間的余裕がない、経済的な事情で歯科医院に連れて行けない、といった保護者の事情が背景にあります。
ひとり親世帯だったり、認知症のおばあちゃんの介護に追われていたり、きょうだいのうち発達障害がある子のケアにかかりきりになっていたりと、家庭環境が切迫する原因はさまざまです」
痛みを自覚したら、骨まで侵食が進んでいた
佐々木院長は学校歯科医として、近隣の小学校で歯科健診を行っている。全校児童500人を診察すると、1人か2人は「この子は放っておけないな……」と感じる重症虫歯の子どもが見つかるという。
先日担当した健診では、特別支援学級に通う外国籍の子どもの口腔内が虫歯だらけで、学校側に懸念を伝えたところ、既に児童相談所が支援に入っているとのことだった。
ネグレクト家庭の場合、発覚を恐れた保護者が学校健診の日に子どもを休ませるケースもあるが、その子の家庭では健診の日さえ把握されていなかったようだ。


