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乳歯20本が全部虫歯、前歯が折れていても放置…小児専門歯科医が明かす「歯の治療をしてもらえない子どもたち」の実態

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虫歯の子ども
虫歯になっても治療を受けさせない「デンタルネグレクト」。その実態に迫ります(写真:liuli/PIXTA)
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「虫歯は昔から、『たかが歯のトラブルでしょう』と軽視される傾向があります」と、佐々木院長は言う。

内科や外科分野の疾患と比べて治療を先送りにされやすいが、乳歯の虫歯は永久歯の虫歯よりもずっと進行が速く、にもかかわらず痛みが出にくい。痛みを自覚した子どもが、自ら「歯医者さんに行きたい」と言い出すころには、骨まで侵食が進んでいるケースが少なくないという。

「細菌があごや首の皮下組織へ広がって蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こし、入院するケースもある。脳内に感染が及んだ事例も報告されており、そうなれば生命の危険にさらされます」

そこまで重症化せずとも、乳歯の下に埋まっている永久歯が侵食されれば、虫歯になった乳歯が抜けた後、ターナー歯と呼ばれる変色・変形した永久歯が生えてくることがある。

そもそも虫歯によって幼少期に硬いものが食べづらくなれば、あごが健全に発達せず歯並びが悪くなったり、栄養不良によって体全体の成長が阻害されたりと、その後の人生に大きな影響を与えかねない。

乳歯は抜け替わるから放っておいて大丈夫…!?

重症虫歯の子を診察するにあたって注意が必要なのは、虫歯が進行しているからといって、デンタルネグレクトに遭っているとは限らないことだ。佐々木院長のもとには、自宅近隣のクリニックに通わせていたものの埒(らち)が明かず、一縷(いちる)の望みをかけて北海道や大阪から足を運ぶ親子もいるという。

日本には約10万人の歯科医師がいるが、佐々木院長のような日本歯科専門医機構が認定した「小児歯科専門医」は約1200人と全体のわずか1%にすぎない。「小児歯科」の看板を掲げる医院でも、「小児歯科専門医」はおらず、子どもの重度虫歯に適切に対処できないケースもあるのが実情のようだ。

「1960~70年代の“虫歯の洪水”と呼ばれた時代を経て、歯みがき粉や予防歯科の普及によって虫歯は激減しました。その結果、最近の若い歯科医師は子どもの重症虫歯なんて見たことがない人が大半で、『乳歯は抜け替わるから放っておいて大丈夫』と言う歯科医師までいる始末です。

小児歯科には、泣いたり暴れたりする子への対応をふくめて専門的なスキルが求められます。虫歯が一向に改善しない、治療に終わりが見えないといった場合は、小児歯科専門医のいるクリニックを探してみるのも一手です」

虫歯が激減した現代とはいえ、家庭環境の悪化や病院選びの失敗など、子どもの歯がむしばまれるリスクは身近に潜んでいる。

(AERA編集部・大谷百合絵)

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