ベトナムのペレット製造業が公衆衛生に及ぼす影響を評価した疫学研究は、これまで発表されていない。しかし、ペレット工場が地域住民の反対に直面しているアメリカでの研究は、こうした懸念がより綿密な調査を必要とする可能性を示唆している。
23年に『Renewable Energy』誌に掲載された研究によると、ペレット製造工程では微粒子状物質、揮発性有機化合物、窒素酸化物、その他の有害な大気汚染物質が放出されることが明らかになった。これらの汚染物質への曝露は、喘息、気管支炎、呼吸器系の炎症、心血管疾患、そして早死にとの関連が指摘されている。
クアンガイ省にあるナン・ルオン・サン・タオ・ア・チャウ社(アジア・クリエイティブ・エナジー〈ACE〉)は、粉塵や排気ガスに関して長年にわたり住民からの苦情に直面してきた。日本の輸出入記録データによると、ベトナム有数のペレット製造会社である同社は、伊藤忠商事、三井物産、住友商事などの日本企業にペレットを供給している。
今年5月、地元当局はACE社に対し、操業を一時的に停止し、大気汚染防止システムを見直すよう命じた。
法定基準を超える濃度の一酸化炭素も検出
地元当局が実施した検査で、工場の乾燥システムから発生する一酸化炭素濃度が法定基準値を超えていることが判明した。あるサンプルでは基準値の1.43倍、別のサンプルでは1.06倍の濃度が検出された。一酸化炭素は無色無臭のガスで、胸痛、視力障害、認知機能低下などを引き起こし、高濃度では死に至ることもある。
今年5月初旬、地元住民が撮影した映像には、ACE社の発電所から立ち上る長い煙の柱が映っていた。住民によると、この施設からの排出物は近隣のコミュニティーに頻繁に影響を与えているという。
国営メディアによると、検査は同社に事前通知を行った後に実施され、工場は稼働率が75~80%程度にとどまっていた。
当局は、工場から放出された白い煙は主に木材乾燥工程で発生した水蒸気であると述べ、ベトナムには水蒸気排出に関する規制基準がないことを指摘した。ACE社は、記事掲載時点までにコメントの要請に応じなかった(筆者注:その後、同社には5000万ベトナムドン〈約2000ドル〉の罰金が科された)。
ベトナムのペレット工場における乾燥工程の熱源として、どのような燃料が使用されているかは不明である。
しかし、アメリカ・インディアナ大学のフィリップ・S・スティーブンス教授は、燃焼源から放出される他の揮発性有機化合物は測定がより困難であり、住民が報告した臭いや目の刺激の原因となっている可能性があると説明した。
記者が取材した、匿名を希望した大気質の専門家らは、一酸化炭素濃度の上昇は、不完全燃焼または最適とは言えない運転状況を示している可能性があると述べた。
また、今回の結果は、25年半ばに施行されたより厳格な規制ではなく、ベトナムの旧来の産業排出基準に基づいて評価されたものであることにも言及した。粒子状物質の濃度は旧基準を満たしていたものの、新規制の基準値を大幅に超過していた。


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