磯野さんの経歴を見てみると、一見、順風満帆なように見える。看護師としてキャリアを積み、医師と結婚。2人の子どもに恵まれ、専業主婦として子どもたちの教育に全力を注いでいた。
しかし、実際の夫婦仲はうまくいかなかった。「子育てには大変なこともたくさんあって『大丈夫だよ』の言葉1つが欲しいときもありました。しかし私たち夫婦に会話はなく、認められることもなかった」(磯野さん)。
妻としてやって当たり前。子育ても母なんだから頑張って当たり前。友人たちと話をしてガス抜きをしても、そこまで深刻な話ができるわけではない。
「涙が出るほど辛いことって、なかなか人には話せないし、別に伝わらなくてもいいと思っていました。友人たちにもそれぞれ苦悩もあって、踏み込めない部分はありますから。それにあまりに惨めな自分は出したくなかった。
側から見たら、すごく恵まれた環境にいたけれど、心の中は満たされなかった。承認欲求もあるし、自分の母親以外の存在意義ってなんだろうって」(磯野さん)
「養ってもらって、恥ずかしくないのか?」
磯野さん自身、看護師なのでいつでも復職はできたが、子ども2人を抱えてシングルマザーになるのは経済的な苦労が目に見えていた上、夫には「子どもが成人するまで離婚はしない」と断固拒否された。
そんな磯野さんが、ある日夫から放たれた「養ってもらって、恥ずかしくないのか?」というひと言で心の糸が切れてしまい、既婚者マッチングアプリに行きついたのは自然な流れだったと言えるだろう。
しかし、そこで待っていたのは、第二の人生を目指すにはあまりにも女性がぞんざいに扱われる残酷な現実だった。
だからこそ、磯野さんがHealmateで徹底しているのは「既婚女性の孤独の深さに寄り添うこと」と「女性にとっての安心安全」だ。
既婚者マッチングサイトの男女比率は一般的に7:3と言われているが、ヒールメイトは登録者約50万人超のうち、男性54%、女性46%と他サイトに比べて女性比率は高い。そして、利用者の半数近くを40代が占めている。
「40代女性は子育ての悩みや更年期による心身の変化が出てくる時期で、人生や夫婦関係を立ち止まって考える人も多い。また、夫から女性として扱われない、認めてもらえないという不満や、『このまま女性として終わっていいのか』という葛藤がある世代。子育てが少し落ち着き、将来を考える余裕が出てくる時期でもあるため、登録につながりやすい」という。
まさに、当時の磯野さんと同様の悩みを抱える女性たちが登録者の中心なのだ。


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