夫の裏切りを契機とした異例の訴訟が中国を揺るがしている。
がん闘病中の妻はある日、夫が不倫相手と不妊治療を行い、受精卵を凍結保存していたことを知った。妻は受精卵の廃棄を求めたが、病院にも行政にも「廃棄する権限がない」と退けられ、病院と夫、不倫相手を相手取って「人格権侵害」の訴えを起こした。
守られるべきは妻の尊厳か、何の罪もない受精卵か。中国メディアが「婚外受精卵事件」と呼ぶこの一件は、生殖補助医療の急速な普及に法律と倫理が追いついていない中国の現実も浮き彫りにしている。
偽の結婚証で体外受精
無錫市に住む朱さんは結婚21年になり、高校生の娘が1人いる。2019年に肺がんと診断され、療養生活を送ってきた。
朱さんが異変に気づいたのは25年10月。夫のスマートフォンに、上海の復旦大学附属中山医院から診察の予定ともに、「身分証と結婚証の原本を持参するように」との案内が記されたショートメッセージが届いたのを見たことがきっかけだった。
不審に思った朱さんが調べると、夫が不倫相手と体外受精を受けており、すでに受精卵が作られ凍結保存されていることが判明した。
さらに衝撃的な事実が明らかになる。中国では夫婦間でしか不妊治療が認められていないが、夫と不倫相手は偽造した結婚証を提出し治療を受けていた。
朱さんは本物の結婚証を携えて中山医院を訪れ、夫と不倫相手の凍結受精卵の廃棄を求めた。しかし病院は「どちらが本物か確証がない」として要求に応じなかった。


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