日本で改革が進まない象徴が縦割り行政です。私は地元市の地域包括支援センター事業に携わっていますが、市役所の長寿支援課へ相談に行くと「介護保険課へ」「生活支援課へ」「市保健所へ」と部署をたらい回しにされることが少なくありません。
担当者はみなさん誠実に職務を果たしていらっしゃいますが、部署ごとに役割が細分化され、組織全体で課題を解決する仕組みになっていないのです。
高齢者が働き続けられる仕組みをつくる
では、2040年問題を乗り越えるために、私たちは何をすればよいのでしょうか。私は、社会保障制度そのものを見直すことはもちろんですが、それ以上に「働く」という考え方を大きく変える必要があると思っています。
現在、日本政府は70歳まで働ける社会の実現を目指し、企業に対して就業機会の確保を求めています。しかし私は、それでも十分とは考えていません。働く意欲と能力がある人は、70歳にこだわる必要はなく、75歳でも80歳でも、それぞれの体力や能力に応じて働き続けられる社会をつくるべきです。
そうすれば、高齢者自身が安定した収入を得ながら生活でき、年金だけに依存しない生き方も可能になります。同時に、長年培ってきた知識や経験を社会へ還元することにもつながります。
私自身、75歳を間近に控えた今も現役で医療の現場に立っていますし、医療や介護の現場にも80歳を超えてなお第一線で活躍している人たちを少なからず見かけます。年齢だけで一律に働く機会を失わせることは、本人にとっても社会にとっても大きな損失です。
もちろん、若い頃と同じ働き方を続ける必要はありません。年齢とともに体力が変化することは自然なことです。だからこそ政府には、画一的な制度改革ではなく、高齢者がそれぞれの能力や経験を十分に発揮できるよう、企業が柔軟な働き方を導入しやすい制度を整えてほしい。
例えば午前中だけの勤務、夜勤の免除、週3日の勤務、経験を生かした教育や指導など、働き方はいくらでも工夫できます。賃金も、一律ではなく仕事内容や勤務時間に応じて柔軟に設計すればよいでしょう。政府には、こうした雇用制度を後押しする制度設計を進めてもらいたいと思います。
もう一つ重要なのは、高齢者自身も新しい技術を積極的に取り入れる姿勢です。AIやデジタル技術を活用できれば、体力の低下を補いながら経験や知識をより生かすことができます。年齢に関係なく学び続ける姿勢が、生涯現役社会を実現する大きなカギになると私は考えています。


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