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「EVはエコ」は本当か?推進派・懐疑派それぞれが意識すべき"脱炭素の条件" 製造過程の排ガス、重さはネックになるか?

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EVのイメージ
EVは本当にカーボンニュートラルに貢献するのか(写真:Ryuji / PIXTA)
  • 籾山 嵩 日本総合研究所 創発戦略センター インキュベーションプロデューサー
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この問題は、鉄道と飛行機の環境性能を比較する議論にも似ている。飛行機は運航時に大量の燃料を燃焼するため、一般には環境負荷の大きい移動手段と考えられており、鉄道は環境に優しい移動手段として対比されて語られることが多い。しかし、鉄道には線路、駅、橋梁、トンネル、高架橋、変電所といった巨大なインフラが必要であり、その建設や維持にも大量の資材とエネルギーが投入されるのに対して、飛行機にも空港や滑走路、航空管制設備などは必要であるものの、都市と都市の間に線路を敷設する必要はない。

そのため、「輸送インフラまで含めれば、飛行機は思われているほど不利ではないのではないか」という疑問が生まれる。このような議論では一人当たりが負担するインフラの環境負荷が結論を分岐させる。乗り物そのものだけではなく、どれだけの人が、どれだけ長く、そのシステムを利用するかも環境性能の決定要因になる。

EVも全く同じであり、排ガスが出るか出ないかだけでは、その環境価値は評価できない。バッテリーの製造、発電、充電設備、道路、そしてリサイクルまで含めた社会システム全体を見る必要がある。環境性能とは、製品単体の性能ではなく、その製品を支えるエネルギー、インフラ、利用方法を含めた社会システム全体の性能なのである。

EVを巡る議論がかみ合わないのも同じ理由だ。推進派が「使用段階」を見ているのに対し、懐疑派は「製造段階」や「資源消費」を見ている。どちらか一方が誤っているのではなく、評価対象と評価期間が異なるのである。

「電力」「バッテリー製造」「車両サイズ」などでEV推進派・懐疑派のそれぞれが重視する点。あなたの考えは?(画像:日本総合研究所)

EV普及よりも問うべきは「使い切る設計」

この議論の最終的なポイントは、自動車を何で動かすかだけではなく、「どれだけ長く、どれだけ有効に使うか」という発想である。脱炭素の議論では、新しい技術に注目が集まりやすい。しかし、製品を短期間で買い替え続ける社会は、どれほど効率の良い製品を導入しても、多くの資源とエネルギーを消費する。

これはEVも例外ではない。むしろ製造時の環境負荷が大きいEVだからこそ、一台を長く使うことの価値は大きい。適切に整備し、中古車として流通させ、寿命を延ばす。さらにバッテリーについても、自動車としての役目を終えた後に定置用蓄電池などとして再利用(リパーパス)し、最後は資源として回収する。そうした循環が実現できれば、製造時に投入したエネルギーと資源をより長期間にわたって活用できる。

重要なのは、「EVを普及させること」だけではなく、「EVを使い切ること」なのである。これは自動車の話を超えた、サーキュラーエコノミーそのものの考え方である。資源を採掘し、製造し、消費し、廃棄する一方向のリニアエコノミーから、製品を長く、複数の利用者が繰り返し使い、部品を別の用途で再利用し、最後には資源として循環させる経済への転換である。EVは、その循環の仕組みの中に組み込まれたとき、初めて本当の意味で環境価値を発揮する。

だから、「EVは本当にカーボンニュートラルに貢献するのか」という問いに対する私の答えはこうだ。EVそのものがカーボンニュートラルに貢献するのかは前提条件次第であるが、再生可能エネルギーによって動き、必要以上に大型化せず、長期間利用され、中古車や部品として繰り返し使われ、最後は資源として循環する社会の中に置かれたとき、EVは確実にカーボンニュートラル達成に不可欠な移動手段になり得る。

結局のところ、私たちが目指すべきなのは、単にガソリン車をEVに置き換えた社会ではない。再生可能エネルギーとサーキュラーエコノミーが支える持続可能な社会であり、EVはその実現を支える重要な構成要素なのである。

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