「中国TCLが、日本のテレビ市場で首位を飾る日はそう遠くないかもしれない」。ある国内電機メーカー関係者は、そう危機感をあらわにする。
東京・池袋の家電量販店。テレビ売り場には、85インチの超大型テレビがところ狭しと並ぶ。俳優・山﨑賢人氏の等身大パネルの隣に置かれたTCL製テレビは約44万円。ソニーやパナソニックの同等クラスが60万円台以上を占める中、圧倒的な安さが目を引く。
売れ筋の55インチでも構図は同じだ。国内大手の主力モデルが16万〜20万円前後であるのに対し、TCLの製品は7万円台と半値以下。中国の競合ハイセンスの製品は10万円前後で、TCLの価格破壊ぶりは際立つ。TCLと聞いても、日本では「中国の格安テレビメーカー」という印象を持つ人がまだ多いだろう。だが世界市場ではテレビ販売台数で韓国サムスン電子を猛追し、テレビ売上高の7割超を中国以外で稼いでいる。
日本電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2025年の国内のテレビ出荷台数は440万台まで減少し、世界市場のわずか2%にすぎない。人口減少やスマートフォンの普及によって市場は縮小し、テレビメーカー各社は「1つの部屋に1台」から「一家に1台」へとしぼんだ需要を奪い合う。一見すると魅力に欠く日本市場だが、TCLは攻勢をかける。
75インチ超の大画面テレビが世界の潮流
「テレビを技術方式で選ぶお客様は、まずいない」
TCLジャパンで日本市場のマーケティングを統括する久保田篤氏はそう言い切る。同社はフラッグシップ機の中核技術として「SQD-Mini LED」を展開するが、仕組みやスペックを説明するだけでは消費者の心は動かないという。「難しい技術を説明しても、お客様は離れていく。映画を観たときの感動、スポーツの臨場感、そして推しが一番美しく見えること。そうした体験から入ってもらうことが重要」(久保田氏)。
TCLは19年の日本市場へ本格参入後、サッカー日本代表・堂安律選手や、スノーボーダーの平野歩夢選手を広告に起用してきた。今年4月からは俳優の山﨑賢人氏をブランドアンバサダーに据えた。スポーツ観戦や映画鑑賞にとどまらず、好きなアイドルや俳優のライブ映像を大画面で楽しむ「推し活」も、新たな需要として取り込もうとしている。
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