彼らのケースは個別に処理され、法律で定められた手続き上の保障が適用される。したがって、最高裁の判決は即時国外追放を制限する一方、移民にスペインに滞在する自動的な権利を与えるものではない。
ただ、この法律は政府が海上に物理的な障壁を設置することを認めており、スペインはつい最近、浮体式障壁を設置していた。ところが多くのSNSへの投稿では、「スペインで公布されたこの法律は、泳いでスペインに来た人を送還することを禁じており、海軍が送還することも禁じられている」と指摘し、即時追放の制限措置ばかりが強調され、法の文脈が読み間違えられている。
結果として国境を越える人の数が前例のないほど増加したことで、スペインとモロッコ間の政治的緊張が急速に高まっている。スペインは数万人の若者がセウタの国境沿いに集結したにもかかわらず阻止できなかったとモロッコに対して批判する一方、モロッコ当局は、意図的に越境を許可したとの非難を否定し、SNS上の誤った情報がこの大規模な移動を引き起こしたと主張している。
ヨーロッパを目指すアフリカ移民を外交の道具にする動き
ヨーロッパ大学院大学のロレンツォ・ピッコリ教授によると、「2015年と16年には、最大100万人がヨーロッパに到着したが、1日に5000人か6000人を超えることは一度もなかった。ところが今回、1日に6万から7万人もの人が押し寄せている」と指摘する。
同教授は「何らかの連携や当局の黙認なしに、このような事態が起こりえたとは考えにくい」と述べ、モロッコが関与している可能性を示唆した。
実際、スペインへの移民の大量流入直後、モロッコ国王のムハンマド6世の即位27周年を記念するレセプションに臨んだ同国王は、演説で移民問題について何も触れなかった。そこで浮上したのはモロッコが移民を外交の揺さぶり手段に使ったという見方だ。
スペイン政府は8月1日までに、ほぼ全員がモロッコに戻ったと発表したが、その事実はない。サンチェス首相はモロッコとの協力関係を強調するが、左派の連立与党からは「モロッコが危機を作った」という非難の声も出ている。
サンチェス首相が7月20日、モロッコと領土問題で対立するアルジェリアを4年ぶりに訪問したことが背景にあり、スペイン紙『ムンド』は「モロッコがスペインの主権に移民圧力をかけた」と論説で主張した。
実は前例があった。2021年5月、わずか約2日間で約8000人がモロッコからセウタへ徒歩や泳ぎで渡り、その中には約1500人以上の未成年者も含まれていた。これは当時としては前例のない規模で、スペイン政府は軍隊と警察を派遣して国境警備を強化し、多くの移民をモロッコへ送り返した。
背景には、西サハラ問題をめぐるスペインとモロッコの外交対立があったと広く分析されており、スペインが西サハラ独立派「ポリサリオ戦線」の指導者ブラヒム・ガリ氏を新型コロナ治療のため受け入れたことにモロッコ政府が反発し、国境管理を一時的に緩めたとの見方が示された。
同事件を受け、EUはスペインへの支持を表明し、移民が外交上の圧力手段として利用されることは容認できないとの立場を示した。


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