7月23日午前、東京・霞が関の経済産業省別館。経産省官僚らが会議室に入ると声が漏れ聞こえてきた。
「住商は来ないのか」
数分後、その会議室に向かったのは長崎県西海(さいかい)市の瀬川光之市長ら一行だ。西海市江島沖の洋上風力発電事業を着実に進めてほしい――。越智俊之・経産大臣政務官への陳情だった。
国は洋上風力発電を重点的に推進しており、これまで国内12の一般海域を「促進区域」に指定。海域ごとに公募を実施してきた。入札は3回行われ、「第1ラウンド」「第2ラウンド」などと呼称されている。落札した発電事業者は海域を最大30年間占有できる。
江島沖のプロジェクトは、第2ラウンドで住友商事と東京電力リニューアブルパワー(東電RP)の企業連合が落札した。発電設備出力は42万キロワット。ベスタス(デンマーク)製で出力1.5万キロワットの風車を28基建てる。運転開始は2029年8月の予定だ。
ところが、この江島沖プロジェクトが瀬戸際にある。瀬川市長がわざわざ霞が関に足を運んだのは、その回避のためだった。
プロジェクトすべては救済されない
三菱商事を中心とする企業連合が、第1ラウンドで落札した秋田・千葉の3海域のプロジェクトから撤退したのは25年8月末。「三菱商事連合の撤退はほかの落札済みの案件にも連鎖するのではないか」。そのような懸念を打ち消すために政府は救済策を取った。では、江島沖プロジェクトがなぜ追い詰められているのか。要因として最も大きいのが「救済策の設計」だ。
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