「我慢しなさい」
「わがまま言わないの」
「早く『ごめんね』って言いなさい」
そうして育つうちに、怒りや悲しみなどの「ネガティブな感情は外に出すと面倒くさがられるもの」という思いこみが心の奥に染みこんでいきます。だから、怒りや悲しみなどの感情が湧いても表には出さず、笑顔でやりすごすのが当たり前になっています。
感情を抑えられる人こそが「大人」「人格者」とされる社会のなかで、私たちはいつのまにか、本当の気持ちを見せることにブレーキをかけるようになったのです。近年はとくに常に明るく前向きに、まわりに感謝といったような「ポジティブ信仰」が盛んになっています。
「ものごとのよい面をとらえよう」
「ネガティブなことを言うと、不幸を引き寄せる」
「常に感謝」
こんなメッセージが、自己啓発書やSNSなどでくり返し発信されています。けれども、怒りや悲しみを押し殺したまま、表面的な「ポジティブさ」や「感謝」で無理やりフタをしようとしても、怒りや悲しみなどの感情は消えるわけではありません。
やがて、心の奥に押しこめた思いが、ときどき顔を出してきます。感情を出さないことが正しいことだと信じて、無理に抑え続けていると、心のなかにネガティブなエネルギーが溜まっていくのです。
感情を抑えれば抑えるほど、心が疲れていく
最近は、会社でコンプライアンスやハラスメント対策が強く求められるようになりました。本音を言えば、角が立つ。感情を出せば、まわりから誤解されるかもしれない。その結果、怒りや不満だけでなく、「ちょっとしんどい」や「正直つらい」といった弱音さえ飲みこんでしまうのが当たり前になりつつあります。
私が以前研修した、ある大企業の話です。この企業の事務部門は、営業部門が取引先から仕事を受けると、その処理に追われます。


※ログイン後、コメント入力が可能です。