もちろん、学研も手をこまねいていたわけではない。むしろ、新たな成長事業を求めて積極的に投資を続けていた。
「19年間で1000億円近くを投資しましたが、ことごとく失敗しましたね」
なかでも象徴的だったのは、1996(平成8)年にリリースしたファックスを活用した教育システム「イマジン学園」だった。
全国13カ所に24時間365日対応の相談センターを設置し、パナソニックと提携して大量のファックス機を導入。さらに手塚プロダクションに制作を依頼したオリジナルキャラクターを採用し、ロールプレイングゲームの要素を取り入れた教材まで開発した。
子どもが問題を解き、ファックスで送信する。質問があれば相談センターが対応する。現在でこそオンライン学習は当たり前になったが、当時の学研はその先駆けとも言える発想を持っていた。この「イマジン学園」には、何百億円も投資したという。
「いい教材だったんですけどね、ちょっと早すぎたんでしょうね。ビジネスは一歩先でなく半歩先が鉄則です」
まだ家庭へのファックス普及率は十分ではなく、また、その後のインターネットの急速な普及により、多額の投資に見合う利用者を獲得できなかったのだ。
振り返れば、学研は変化に対応しようと探索にもがいたが、奇しくも成果に結びつかなかったということだ。
沈滞ムードが漂っていた本社
一方で、より深刻だったのは、組織内部の現状である。
2004年、宮原社長は事業部長として神戸から東京本社へ異動する。目にしたのは、かつて教育出版業界をリードした企業とは思えない光景だった。
「本社は全体的に沈滞ムードが漂っていました。会議では居眠りする人もいた。自分が一生懸命働かなくても、誰かが稼いでくれるだろうという空気があったんです」


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