教育出版社として知られた企業は、いまや「教育・出版」と「介護・福祉」を両輪とする企業へと姿を変えている。
だが、学研は教育事業を捨てて介護事業へ転換したわけではない。祖業である教育事業を磨き続けながら、まったく異なる介護・福祉事業を育て上げたのである。
既存事業を深める「深化」と、新たな成長機会を探る「探索」。この両方を同時に追求することを、経営学では「両利きの経営」と呼んでいる。
では、教育・出版事業の成長が縮小するなかで、学研はいつ、どこで、新たな成長市場の種を見つけたのか。
その答えは、経営会議のなかでもなく、コンサルタントの提案でもない。全国の家庭を訪問していた営業担当者たちの現場にあった。
この変革を主導したのが、2010年に株式会社学研ホールディングス代表取締役社長に就任した宮原博昭氏(以下、宮原社長。発言も同氏)である。介護・福祉事業をいかにして第二の柱へ育て上げたのか。宮原社長に話を聞いた。
新事業探索に1000億円かけるも、失敗続き
1990年代に入ると、日本社会は大きな転換期を迎える。
出生数は減少を続け、子どもの数そのものが減り始めた。家庭にはパソコンやゲーム機が普及し、子どもたちの時間の使い方も変わっていく。かつて当たり前だった「毎月教材が届き、付録で遊びながら学ぶ」というスタイルは徐々に通用しなくなっていた。特に『科学』への影響は大きかった。
「付録って組み立てるのに時間がかかりますよね。子どもたちが付録で遊ぶことから離れてしまって、さらに共働きが進んだこともあり、親子で作るという時間も減ってしまって」(以下、宮原社長)


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