普通の受験生であれば、E判定を見た瞬間に「もう志望校を下げよう」という性急な答えに飛びついてしまいます。それはある意味、健全な判断でもあります。
でも清野さんは、そこで安易な答えに逃げなかった。「無理かもしれない」と「でもやりたい」の間で揺れ続けたまま、勉強し続けたのです。この「宙ぶらりんに耐える力」こそが、彼の合格を決定づけたのだと僕は思っています。
「足りない」ことが、逆に思考を鍛える
そしてもうひとつ大事なのは、ネガティブ・ケイパビリティは「足りない状況」でこそ鍛えられる、ということです。
清野さんは、机に向かって勉強できる時間が、周りの東大受験生に比べて圧倒的に少なかった。家事があり、介護があり、家庭内のトラブルがあり、精神的な負荷もあった。参考書を買うお金も、塾に通うお金も、家庭教師に頼るお金も、ありませんでした。
普通、これは「不利」でしかありません。だけど、だからこそ、彼は「考えた」のです。
「教えてくれる人がいない」→じゃあ、自分で調べるしかない。
「勉強時間が短い」→じゃあ、密度を上げるしかない。
「同じ問題集を何周もする余裕がない」→じゃあ、一周でどう定着させるか考えるしかない。
その結果、彼はインターネットで学習科学を調べ抜き、こんなメソッドにたどり着きます。
• ファインマン・テクニック(人に説明する)
• スペースド・レペティション(忘れた頃に復習する)
これらは今、認知科学の世界で「最も学習効果が高い」と言われている手法です。彼はこれで共通テストの英語の得点率を6割から9割に伸ばし、東大過去問50年分、共通テスト・センター過去問15年分を独学でやり切りました。

