清野さんのご家庭は、東日本大震災の影響でお父様が仕事を辞めざるをえなくなり、神奈川へ移住します。お父様はその後、脳梗塞など複数の病気を患い、働くことが困難になりました。一家は生活保護を受給しながら、築50年の集合住宅で暮らしていました。
彼の人生の転機は、中学3年生の1月に訪れます。本書には、以下のようなお母様のセリフが書かれています。
「家族が一緒にいられるうちに、一家心中してしまうほうがマシなんじゃないかって」
泣き崩れるご両親、布団の上に置かれた1本のナイフ。この場面を、清野さんは中学3年生で目撃しているのです。
「合格確率1%」から、東大にチャレンジ
一家心中をなんとか思いとどまり、高校に入った彼に、試練が訪れます。コロナ休校中、専業主婦だったお母様が精神疾患を発症。清野さんは妹さんと家事や両親の介護を分担する、まさに「ヤングケアラー」になっていきます。
本の中に、こんな一文があります。「『ステイホーム』、地獄の始まりでした」
家庭内では、お父様が焼酎の瓶を壁にたたきつける場面もありました。清野さんは平日正午の横浜駅のホームで、線路に飛び込もうとしたことすらあります。そのとき、たまたま声をかけてくれたクラスメイトの住田さんによって、彼は救われました。
そして迎えた大学受験。東大模試では独学で全国3位・A判定をたたき出していた彼ですが、共通テスト本番では数学と国語(99/200点)で大失敗。自己採点の結果は、「東京大学文科一類 E判定 合格確率1%未満」。それでも彼は、恩師の中町先生からの「本当は、どうしたいんだ? 本音を言ってみろ」という問いに背中を押され、東大に出願します。
そして2022年3月10日。合格発表のウェブサイトで、彼は自分の受験番号「A10600」を確認します。生活保護世帯から、塾なしで、ヤングケアラーとして家族を支えながら、東京大学文科一類に現役合格したわけです。

