しかも、現時点でのAIは、文章の整合性やキーワード、構成の美しさを評価することは得意でも、その文章が「本人のどの経験から、どの程度の実感を伴って出てきた言葉なのか」までは捉えにくくなっています。学生の側も、それを知っているからこそ、ますます"見栄えの整った文章"へと寄っていきます。
学生が語るのは「AIに最適化された自分」
結果として、本人の実像に近づくために行なうはずの選考が、整った文章同士を読み比べる作業に変質しやすいのです。
これは、採用担当者の判断対象そのものを、「学生本人」から「文章」にずらしてしまっているということです。
以前であれば、「この学生は何を経験し、そこで何を考えたのか」を見ようとしていました。ところがAI補助が広がった現在、企業は、無自覚のうちに「この学生はどれだけ上手く自分を整えたか」を見てしまいます。
文章が上手いことと、実務で再現性高く成果を出せることは、本来イコールではないはずです。それにもかかわらず、エントリーシートや初期面接の段階では、そのズレが見えにくくなってしまいます。
さらにいえば、学生は「AIに評価されやすい語り」を繰り返すうちに、最初は言葉を整えているだけだったはずが、自分の経験の意味づけまで、AIの論理に沿って組み替えられていきます。主体的な就職活動はそこになく、AIに最適化された自分しか語れなくなっていきます。
これが示すのは、エントリーシート作成の効率化だけではなく採用における自己表現そのものの変質です。ここに、AIを用いた採用の本質的な危うさがあるのです。



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