また、この反応閾値は、同じ個体でも仕事によって差があるようです。つまり、掃除はすぐ始めるが餌やりは腰が重い、というようなことがありえます。まぁ、人間でも仕事の好き嫌いがありますからね。
その結果、同時に生じる複数の仕事にも対応出来るようになります。こうすることでアリは反応閾値に反応した自分の目の前の仕事だけこなしていれば、全体では複数の仕事が必要なだけこなされることになります。
「サボりアリが2割」という絶妙な割合
重要なのは、全員フットワークが軽くてもダメなのです。
全員がフッ軽だと、1匹の幼虫に餌をやるために巣の全員が稼働するような非効率的なことが起こり得ます。しかも、アリは結構おバカさんなので、それが非効率であることに気づけるだけの知能はありません。
この反応閾値の違いは、遺伝の影響が強いと言われています。女王が多くの父親と交尾して子を産むので、父親由来の反応閾値の違いが、巣の繁栄を支えているのです。
サボりアリが2割というのも絶妙です。というのも全員が稼働して巣の維持をしていたら有事の際に誰も動けません。たとえば雨の日の巣の水没などに対応出来なくなります。
反応閾値の違いは、いわばベンチメンバーともいうべきサボりアリの維持にも、一役買っています。というのも、反応閾値はグラデーションになっています。
たとえば、働きアリだけを集めて巣を作っても、その低い反応閾値の個体同士でもさらに強弱があります。発生した仕事に対し、最も敏感なアリが対処に当たることで、これまで相対的に敏感だったアリまで仕事が回って来ず、やがて働かないアリになっていくのです。
このように、働かないアリが一定数いることで巣は維持されていくのです。サボりは社会の維持に必要な個性だったとは驚きです。良かった良かった、日本社会が円滑に回っているのは、どうやら私が仕事をサボって公園でアイス食べているおかげのようです。


