モスクに着くと、セラールは「近くまで来ればお祈りをしたのと同じだから」と言って中には入らず、隣のカフェでミントティーをごちそうしてくれた。甘い紅茶とさわやかなミントが調和したこの飲み物は、松田聖子の歌にも登場する。モロッコを旅する中で大好きになった味だ。
その後、シャウエンの小さな街を案内してもらった。本職のガイドだけあって歴史や文化を細かく説明してくれ、ありがたいことこの上ない。
セラールが連れて行ってくれた店のスタッフたちは、皆日本語が達者だった。片言というレベルではない。 絨毯屋の店主は「日本人は最近貧乏だからね。見るだけでいいよ」と言いながら、数万円する絨毯を何枚も広げてくれた。失礼だが、その通り。
夕食をとったレストランでは、端末の故障でクレジットカードが使えなかった。焦っていると店主が「日本円でいいよ」と言うので、1万円札を渡した。まさかアフリカで日本円が使えるとは。聞けば、彼もかつて東京で働いており、妻と子どもは今も日本に住んでいるという。
異国の焼き鳥と漬物に感涙
宿に戻って一息つく間もなく、セラールに「月を見よう」とテラスに誘われた。上がってみて驚いた。宿のスタッフ、セラール、さらには先ほどの絨毯屋までいる。
隣に座っていたアリさんという男性は、「埼玉の西川口に19年住んでたけど、最近帰国して日本料理店を開いた」と自己紹介してくれた。宿のスタッフであるカルロスも、福岡のモロッコ料理店で長く働いていたが、コロナ禍をきっかけに帰国し、サクラで働き始めたという。
日本人の大半が一度も行くことがないようなシャウエンで、モロッコ人たちと日本語で西川口や福岡について語り合っているのが何とも面白かった。そして大半が日本人女性と結婚していた。日本人男性の草食化が進む中で、ストレートでどこか強引なモロッコ男性に惹かれる日本人女性が一定数いるのも、わかる気がした。街中でも、モロッコ人に声をかけられてお茶をしている日本人女性を複数見かけた。

