宿の名前は「Hotel Sakura(ホテルサクラ)」。いかにも日本に関係ありそうなここを3泊予約したのには理由がある。
筆者は仕事をしながら旅をしていたのだが、突発的な案件が入り、時差も手伝って深夜に電話やメッセージが次々と届く状況になっていた。しかし、モロッコの宿はデスクや椅子がなかったり、砂漠のテントだったりと仕事ができる環境になく、大都市のマクドナルドに駆け込んで作業していた。
シャウエンで落ち着いて仕事できる宿を探して見つけたのが、「サクラ」だった。設備自体は他の宿と変わらないが、スタッフが日本通であることは明白だったため、何か困ったときに相談しやすいと考えたのだ。
日本風の名前とは裏腹に、内装はスタッフのこだわりが詰まった「リヤド(モロッコの伝統的な邸宅ホテル)」スタイルだった。部屋の中も、窓から見える景色も、おとぎ話のような青い世界が広がっている。
ここでPCを広げたらSNS映えしそうだなと考えていると、部屋のドアがノックされた。
「日が沈む前に散歩に行きましょう」
声の主はセラールだった。 「金曜日はイスラム教にとって重要な日で、私はモスクへ礼拝に行きます。夕日がきれいだから、あなたも一緒に行きましょう」と誘われ、お供することにした。
モスクへ行くけどお祈りはしない
彼は国家資格を持つツアーガイドで、以前は日本でも観光関連の仕事をしていたという。今はモロッコで日本語、英語、アラビア語、フランス語を操ってガイドをしているそうだ。
今回も直前までトルコ人グループを案内していたが、疲れたため仲間に後を託し、途中で抜けてシャウエンに寄り道したらしい。それだけで、自由すぎるモロッコ人の断片が見えてくる。

