「あなた、旅行者の間でとても有名ですよ」と言うと、Azizはニコニコしながら「私は横浜に家族がいるんです。グーグルマップにAzizかっこいいと書いてね」と着物を着たお子さんの写真を見せてくれた。まさかこんな場所で日本語を聞けるとは思わなかった。
宿の客が客を迎えに行く謎システム
バスを待っていると、WhatsApp(海外で主流のメッセージアプリ)の着信音が鳴った。宿との連絡でメッセージはよく来るが、通話は初めてだ。ドキドキしながら応答すると、「私はシャウエンのホテルの者です。日本語を話したいから電話しました」と男性の声が聞こえてきた。
「日本語を話したいから」という理由だけでかけてくるモロッコ人のたくましさを垣間見る。
「シャウエンでバスを降りたら、宿まで徒歩10分です。荷物が少ないなら歩いて来てください。もしタクシーに乗るとしても、20ディルハム以上は払わないで」
なんと親切な。バスが発車してしばらくすると、今度はメッセージが届いた。
「迎えに行くから、バスを降りたら待っていて」
世界を旅する日本人バックパッカーの間で、モロッコはインドやエジプトと並び「世界三大うざい国」と呼ばれることもある。筆者はモロッコ現地で老若男女に絡まれまくり、ネットで調べてその呼称を知った。このホテルのスタッフも、親切とうざさのギリギリのラインにいる感じがする。
4時間バスに揺られてシャウエンに到着すると、サングラスをかけた中年男性が手を振りながら近づいてきた。
「宿の人ですか?」と日本語で尋ねると、彼は「私はホテルの客でセラールです。車を持っているから、スタッフに頼まれて迎えに来ました」と言い、私の荷物をトランクに載せた。客なんかい!
宿に着くと、セラールは当たり前のように無人のフロントに入り、チェックインの手続きを進めてくれた。筆者のパスポートをパラパラとめくり、「モロッコは最後のページにスタンプを押すことが多いんだよ」と入国日を確認する。なるほど、豆知識。

