秋ごろには手応えを感じ始め、「小児科医になりたい」「医学部に進みたい」という目標もより明確になる。
本気で受験勉強に打ち込んだのは、この受験までの約1年間だった。一日平均14時間机に向かい続け、その努力が実を結び、冬の受験で医学部に合格した。
問題はゲームではなく「自分をコントロールする力」の未熟さだった
大学入学後、ゲームは再開した。しかし、以前のように依存することはなかった。勉強もゲームも、自分で優先順位を決められるようになっていたからだ。
阿部さんは、自らの人生を振り返り、こう語る。
「問題はゲームではありませんでした」
小学生の頃は、親がゲーム時間を管理し、中学受験ではゲーム攻略のように勉強を進めることができた。しかし、高校になると、自由な環境の中で自分で何を優先すべきかを決めなければならなくなる。今振り返ると、高校で初めて、自分にはその力が十分育っていなかったことを思い知らされたという。
現在は家庭医療専門医として、ゲームに悩む子どもや保護者の相談にも数多く向き合っている。そこで阿部さんが重視するのは、「ゲームに熱中している」という行動そのものではない。
その背景に、学校生活や友人関係、親子関係への不安やストレスはないか。ゲームが現実から逃れるための「ネガティブな熱中」になっていないかを丁寧に見極めるという。
親がゲームを取り上げれば、一時的に遊ぶ時間は減るかもしれない。しかし、それだけでは親の目が届かない場所で、自分をコントロールする力は育たない。
一方で、ゲームの中で身につく「目標を立てる」「試行錯誤する」「失敗してやり直す」といった力は、本来、勉強や仕事にも生かせる力でもある。
だからこそ、親がゲームを敵視して取り上げるのではなく、その経験を子どもの成長へどうつなげるかを一緒に考えてほしいという。
ゲームは敵でも味方でもない。子どもが自分で考え、自分で選び、自分で行動する力を育てる。そのためのきっかけにもなり得る。
それが、自らゲームにのめり込み、遠回りを経験した阿部さんがたどり着いた結論なのである。


