
そこで、小学校の生活にスムーズに移行するために、幼稚園・保育園でも規律を重視することがさかんにいわれた。幼稚園・保育園を小学校での授業に慣れさせる訓練期間にすべきという意見である。それを実行する幼稚園や保育園も少なくなかった。
しかし最近は、それがあまりいわれなくなってきている。それには、11年に全面実施となった小学校の学習指導要領で、小学1年生の初期に幼稚園・保育園の生活からスムーズに移行するための「スタートカリキュラム」を導入することが決められたことの影響が大きい。
幼稚園や保育園に小学校入学後の準備をさせるのではなく、小学校側がスムーズに移行できるように配慮すべきだとされたのだ。とはいえ、小学校では1年生でも教えなければならない教科内容が決められている。スタートカリキュラムばかりに時間をとられていては、教科の指導が遅れてしまいかねない。
そこでスタートカリキュラムは入学してすぐの4月と5月だけの2カ月間だけと決めている学校が多く、なかには1カ月で切り上げるところも少なくない。そんな短期間で、幼稚園・保育園の生活から小学校の生活への切り替えがうまくいくはずもない。
スタートカリキュラムを1年間かけて行った結果…
東本郷小学校では、このスタートカリキュラムを1年生時の1年間をかけて行っている。23年度から25年度までの3年間、横浜市のモデル授業研究校になったこともあって取り組んだが、研究校の指定が終わった現在も続いている。
その結果、学校嫌いや学校に行きたくないという1年生はいない状況になっているのだ。堂腰氏が次のように説明する。
「授業中45分間は黙って先生の話を聞く従来のスタイルではなく、もっと幼児期の生活に近い柔軟な教育課程にします。15分単位のモジュールで考えれば45分の授業は3モジュールになります。算数の勉強を45分間できない子がいれば、無理やり座らせておくのではなく、『15分間だけがんばってみようか』と声をかけて座らせます。15分が過ぎれば、無理に座っていなくてもいい。寝っ転がって授業を受ける子も、実際いたりします」

