関西経済圏の中心として発展してきた歴史、行政機能、企業集積、研究・医療基盤など、長年蓄積された強みが大阪の存在感を高めてきた。だが、副首都に求められる役割が、単なる第2の大都市づくりではなく、東京圏が大規模災害によって機能不全に陥った場合の国家機能の代替であるならば、過去の蓄積だけで候補地を判断することはできない。
必要なのは、これまで築かれてきた都市機能を評価しながらも、新たな危機環境に対応するために、別の条件を持つ地域にも目を向ける戦略の見直しだ。経路依存性を理解することで、特定の枠組みに執着する原因を見極め、将来の判断をより合理的に考えられるようになる。
歴史の中で大阪が培ってきた属性
神戸に生まれ、京都で学生時代を過ごした筆者にとって、関西独自の言葉や文化は身近に感じてきた街の空気だ。大阪には、初対面の相手とも自然に距離を縮める人懐っこさや、商売でも日常生活でも人とのつながりを大切にする文化がある。外国人旅行者の中にも「東京より大阪の人のほうが親切で温かい」と感じる人が少なくないのは、こうした都市文化の魅力によるものだろう。
ここで述べたいのは、大阪の文化や、そこで暮らす人々への批判ではない。むしろ、その魅力を理解しているからこそ、副首都という国家的な役割を考える際には、大阪が長い歴史の中で培ってきた属性を冷静に分析したい。
その意味で1つの比較対象となるのが、カナダ東部のケベック州だ。
同州は、周囲を英語圏に囲まれながらも、歴史的な経緯からフランス語を唯一の公用語と定め、独自の文化、法制度、社会慣習を現在まで維持している地域である。連邦政府や英語圏社会との関係の中でも、自らの言語や文化を守ろうとする強い意識を持ち続けてきた。
同時に、伝統的なアイデンティティーを共有する住民同士の結びつきは強く、共通の価値観が地域の連帯感を生み出している。このように、歴史的な経緯によって形成された社会の性格が現在の行動様式にも影響している例として、しばしば取り上げられる。
大阪もまた、長い歴史の中で独自の都市社会を形成してきた。ただし、その形成過程は東京とは大きく異なる。

