アメリカに追随するのではなく、日本的なもの、日本の良さを追求することで、その存在感を世界にアピールする。たとえば非武装平和主義を掲げた憲法9条の意義について、積極的に世界に発信していく。それによって、主権国家として自立していくことこそが真のグローバル化なのではないか。
そのための鍵になると、熱心に読んでいた本が新渡戸稲造の『武士道』でした。
アメリカのルーズベルト大統領も愛読していたことは有名ですが、矢内原忠雄が述べているように、新渡戸が「日本道徳の価値を広く世界に宣揚せられた」事実に感銘を受けました。
現代日本が抱えるさまざまな問題は、武士道が衰退して国家が精神的に退廃したところから生じている。もう一度、「忠義」「仁」といった武士道の「徳」を取り戻すことで、そうした問題も解決できるはずだ──。今考えると、当時の私は精神論で、あらゆる問題を乗り越えようとしていたのかもしれません。
そんな10代の私に大きな転換をもたらしたのが、大学時代に出会った一冊の本でした。
ゼミで『ドイツ・イデオロギー』と出会う
私に転換をもたらした一冊の本、それは、『ドイツ・イデオロギー』でした。マルクスが『資本論』よりもかなり前に盟友・エンゲルスとの共著の形で出版した著作です。
新渡戸と同時期に読んでいた内村鑑三に影響を受け、内村のようにアメリカのリベラルアーツ・カレッジで学んでみたいと考えた私は、高校卒業後、米コネチカット州にあるウェズリアン大学への進学を決めます。ただ、学期の始まりが9月だったので、高校卒業からの半年間だけ、東大に通うことにしたのでした。
大学に入った後は、手当たり次第に本を読みました。周囲の同級生たちには自分とは比べものにならないくらいの読書経験があるのに驚いたこともあったのでしょう。その時期に、たまたま参加していたゼミで手に取ったのが『ドイツ・イデオロギー』だったのです。

