たとえば50代になったら、20代のように重たいバックパックを抱えて夜行列車で連続移動するといった体力勝負の旅を考えるのは難しくなるが、軽いトレッキングなどを含めた旅なら大丈夫だろう。
一方、70代を過ぎたら足腰に問題が出てくる可能性があり、そうなれば滞在型のゆったりとしたツアー旅行などに切り替える必要もありそうだ。こうして自分の残り時間を10年単位のバケットに区切っていくと、「いつか」という曖昧な願望を、具体的な期日を伴った行動に変えることができる。
どのくらいのお金が必要なのか?
しかし、そうはいっても旅行などでお金を使って、老後の資金がなくなってしまっては困る、という心配もあるだろう。そのため多くの人は「老後が不安」だと考えて、使われない金融資産を積み上げ続けてしまう。
老後に備えるためにいくら必要か、という問いに必ずしも正解はない。しかし試算もしないまま不安を抱えているばかりでは、後悔することは目に見えている。
本書では、老後に必要な資金を、生活を維持するのに必要な食費、住居費、光熱費、医療費などの「生活費」と、人生を豊かにするための旅行、趣味、家族との食事、孫へのプレゼント、学びなどの「体験費」を分けて考えることを勧めている。
「生活費」は、もちろん個人差はあるが、夫婦で年間300万円くらいを想定すれば大丈夫だろう。健康保険制度の充実した日本では、高齢になっても医療費をいたずらに高額に見積もる必要はない。
「体験費」は年齢により異なる。健康状態が悪化すると、体験をしたくてもなかなかできなくなる、つまり使うお金が少なくなるのだ。たとえば、比較的健康であろう70代までは70歳までは年間200万円、80代にはその半分の年間100万円、90代以降はさらに少なくなって80代の1/5の年間20万円、というように考えてみてはどうだろう。
収入面では、定年退職時には退職金も期待できるだろうし、完全に引退するまではそれなりの所得もあるだろう。また引退後の年金額も今からわかるはずだ。
2025年の日本人の平均寿命は、男性81.35歳、女性87.33歳である。また、厚生労働省の「令和7(2025)年簡易生命表」によると、2025年の死亡状況が今後も変わらないと仮定した場合、生命表上、60歳に達した人のうち、男性は約10.6%が95歳まで、女性は約7.5%が100歳まで生存すると見込まれる。
そこで、自分の死亡年齢を男性なら95歳、女性なら100歳と仮定し、表計算ソフトで簡単な収支シミュレーションをしてみると、老後に必要な資金の目安を試算できる。
もちろんここで説明したのは簡単な試算なので、詳細は専門的な書籍や記事をあたってほしいが、それでもザクッとした数字はでるはずだ。将来には急激なインフレや大地震といった想定外のリスクもあり得るわけだが、一方で、必要以上の資産を残し、使える時期を逃してしまうことも、無視できないリスクである。

