平日の昼過ぎに訪れたからだろう、館内は貸し切り状態に近かった。大人の社会科見学をする上で、これほど最高の環境はない。私はそうめんの知識、揖保乃糸が紡いできた歴史について学ぶため、勢いよく階段を駆け上がった。
そうめんは高級品。揖保乃糸には等級がある?
「なるほど。そうめんの原型となったのは遣唐使から伝えられた“索餅(さくべい)”で、昔は宮中のおもてなし料理の1つだったのか」
「今私たちが食べているそうめんと、ほとんど変わらない見た目と作り方になったのは中世、鎌倉時代くらいから。だけど当時はまだ庶民が気楽に食べらない高級品で、ようやく庶民がそうめんを楽しめるようになったのは近世、江戸時代くらいからだけど、それでも贅沢品であることに変わりはなかった」
「実家に住んでた頃、よくお母さんに“また今日の昼もそうめんなの?”と不満を伝えてたけど、ちょっと反省しました。お母さんとそうめんの歴史にゴメンナサイ」
展示室では、そうめんの作り方について詳しく解説されていた。大変お恥ずかしいことに、私はここに来るまで「5分くらいあればそうめんは作れるに違いない」「生地を作って細く伸ばすだけでしょ」と本気で思い込んでいたのだけど……。
生地をこねて、細くして、熟成させて、また生地を細くして、熟成させて……。8の字を描くように掛けたり、細長い棒で均等にさばいたり、「そうめん職人」の技と労力が求められる、なかなかに手の込んだ製造方法であることを知った。

