規範に応え続けることに慣れた心のまま、彼は家庭も築いた。しかし安達さんは、結婚から8年後、離婚する道を選ぶ。子どもが生まれてから7年後のことだ。
元妻は、その決断に心底驚いていたそうだ。それだけ普段の様子からは、兆候が見えなかったのだろう。しかし当時の安達さんは人知れず心を病んでおり、離婚後にはうつ病と診断された。自分に課した規範を実現する過程で、知らず知らずに心が疲弊していたのだという。
離婚後はシェアハウスで暮らしたり、国内のエコビレッジで暮らしたりしながら、内省していた。会社を辞め、Webライターや間借りのカレー屋、インドでヨガを学ぶ生活も経験した。
「シェアハウスで他人と暮らすのは、新鮮な体験でした。それまで交わることのなかった人たちと出会い、全然違う仕事の人、違うことで悩んでいる人と語り合って、自分の世間知らずを痛感しました。価値観が混ざり合うことに関して、本来私はウェルカムな性格なんだと気づきましたね」
「もっと認めてほしかった」——父になっても消えない幼さ
「自分の中で解消しきれていない幼さみたいなのが、あるのかもしれません。子どもの頃に抱いた『もっと褒めてほしかった、認めてほしかった』という気持ちが、くすぶっている。だから我が子と接していた当時も、どう接したらお互いが楽しく過ごせるのかと悩んでしまいました」
元妻は再婚しており、息子はその家庭で育っている。安達さんは定期的に息子と交流し、元妻とも連絡をとっているのだという。

